君と迎える
※ツイッターで騒いでいた小学生パロのボージャックと13号の話です。
ボージャックが完全ショタで13号が完全ロリ、まさに原型なしです。
授業終了のチャイムが学校内に響くと同時にあたりが一気にざわつき出した。今日は午前授業なため4時間で下校できるため、皆遊びの約束でもしてるんだろう。机の中の教科書を取り出してランドセルに適当に引っ詰め早々に教室から出ようとしたところで、先程から人だかりの中心でだべっていたクラスメートに話しかけられた。彼は確か惑星カナッサだかなんだかの出身で特殊な能力を持っているが、だからといって彼の人望をその能力のみに決め込むのは愚かだろう。
「ボージャック!お前も今日来いよ!俺んちでレイブラやろうぜ!」
「悪い、先客がいるんだ」
「そっかー、じゃあまた誘うな」
残念そうに肩を落としたかと思うとにかっと眩しい笑みを浮かべる。こうした彼の気遣いや仕草が彼の人望に繋がるんだろう。俺には無縁そうだが、次期族長としては見習いたいと思う。あくまでもそう思うだけだ。
教室から出て下駄箱へと向かっていると廊下の曲がり角から見たことのあるシルエットの影が差していた。五人組の、やけに小さい影と大きい影が混在している集団と言えば。すぐにぴんときたが正直関わり合いになりたくないためその影を避けるように離れて通り過ぎた。
「待て!」
…通り過ぎられなかったようだ。
「ハッハー!よおボージャック!今日も元気そうだな!」
「…はあ…」
「どうだ、一勝負!今日は渡り廊下を―――」
「すいません、俺人待たせてんで」
「なんだって!?それじゃあしょうがないな…よーしお前等!俺たちで勝負だ!」
ギニューに従っている四人組はおー!と声を揃えて上げた。その返事に満足げに頷いてからギニューは四人組を引き連れ渡り廊下の方へと姿を消した。突然訪れさっさと過ぎ去るというまさに嵐のような奴らだ。
ぼーっとギニューたちの消えていった廊下を眺めていたが校門で瞳を輝かせながら今か今かと俺を待っている奴を思い出し、急いで靴を履き替え校庭を駆けて突っ切る。生ぬるい夏の風が肌にまとわりついた。校庭を突っ切っている最中にこのお馬鹿さんたちが!と開いている渡り廊下の窓からフリーザ校長の怒鳴り声が聞こえた。ちらっと窓の方を見てみると五人組がしょんぼりしているのが見えた。やっぱりあいつらと関わるのはやめよう。
ふいと窓から目を外し校門のあたりを見回すが、遅いと不平を漏らしながらも満面の笑みで抱きついてくる奴の陰はない。まだ来ていないのかとこめかみから垂れてきた汗を拭うと視界が揺れ背中に衝撃が走った。
「ボージャックはやいなー!」
「…13号、いきなり抱きつくなって言ってんだろうが」
「だって会いたかったから!」
背中に張り付いている13号を無理矢理引き剥がし校門から出る。なにも言わずともついて来る13号に少し気分が良くなった。が、もっと落ち着いていてくれればこいつもかわいい方なのに、と今まで拭ってきた尻の数を思い出して良くなっていた気分は一気に落ちた。ふと13号を見てみるとニコニコしながら嬉しそうに俺の隣を歩いていた。シャツや短パンから覗く真っ白な肌はどうやら焼けないらしい。汗一つ掻いていない。人造人間だから当たり前なのだろうが暑さを感じないあたりは正直羨ましい。汗だくでシャツがびしょびしょな俺とは正反対だ。
「13号、お前汗掻かないのか」
「うん、暑くないから掻かないよ」
「…いいな」
ぽろりと漏れた言葉に13号はぴくっと反応し歩を止めた。立ち止まり俯いている13号に俺も立ち止まりどうした、と声をかけると13号はしばらく黙りこくってから顔を上げた。
「でも、だいすきな人の体温が分からないのはかなしいよ」
幼い輪郭は切なく困ったような笑みを浮かべていた。しまった、失言だったか。自分の心無い発言を悔いるがもう遅い。先程まで輝いていた13号の表情は完全に曇っていた。13号のだいすきな人であろう俺がこんな失言をするなんて情けない、暑さで頭がいかれたのか。暑さとは違う汗が頬を伝う中必死にフォローの言葉を探したがうまく頭が働かない。こう考えている間にも13号は思い詰めているだろう、と思うといてもたってもいられなくなり、鈍い動きを繰り返す脳はもう使えないと判断して行動に表すことにした。
「わ…!」
「……」
屈んで小さい13号を抱き締めてみると先程背中に抱きつかれたときは感じられなかった冷たさが肌をつついた。ぷにぷにしてふにふにして、完全に人間みたいな暖かそうな体なのにひんやりとしているなんて不釣り合いだと思った。
「俺はお前の体温感じられるし…うまく言えねぇけど、まあ、…いいんじゃね?」
「…ボージャック…!どう!?おれの体温、どんな?」
「冷たくて気持ちいい」
「ん、おれの中の緻密機械がオーバーヒートを防ぐために冷却機能が自動で働いてるからだよ!」
「…へえ?」
「じゃあじゃあ、手繋いでてあげる!これからずっとこうして帰ろ!」
さっきまでの暗い顔はいったいどこへ消えたのか、きらきらと輝いている笑顔を浮かべながら俺の手を握った。世で言う恋人つなぎをしているあたりがいじらしく、薄く笑ってから手を握り返し立ち上がる。13号は僅かにスキップをしており嬉しそうにランドセルをがしゃがしゃと揺らしていた。13号のひんやりした手のお陰で汗と身体の暑さは引いたが、なぜか顔の熱さはとれないままだった。13号に頬擦りでもすれば冷えるか、と思ったが余計熱くなるだろうともう一人の俺が心で小さく呟いた。
電柱に止まった蝉が一匹騒いでいるのを見上げると太陽の光もいっそう目に入り、空いているもう片方の手で陰を作って顔を隠す。
「夏、だな」
隣で13号が弾んだ声でそうだね、と相槌を打った。
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