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 休日の昼下がり

「トランクスくんって意外とベジータさん似だよねー、そこも好きだよ!」

「…」

「トランクスくんの髪ってサラサラだよなぁ、ここも好きだな」

「……」


悟天の直球ながらも甘い囁きが耳から入り込みぐわんぐわんと脳を揺らした。好きという言葉が出る度、長かった片思いに終止符が打たれたことが白日の下へ出でる。未だ実感が沸かないため、自分でも悟天と恋仲になれたのだと深く認識はできていない。けどこうして悟天がいつも女の子たちに向けていた瞳を俺だけに向け、いつも女の子たちに宛がっていた言葉を俺だけに宛がっている。
嬉しさで卒倒しそうになりながらもあまり浮かれないため悟天は演技をしているのかも、とありもしないようなことを牽制として自分に問い掛ける。しかし悟天も相当浮かれているらしく、嬉しいことがあると足を振る子供の頃の癖が復活し、ふにゃふにゃとだらしのない笑みを浮かべ、先程から何かと俺の特徴を上げてはそこも好きだと言い放つ。悟天のマグカップを割ったときのことに至っても好きと言っていたが、そこまで行くと最早こじつけだ。悟天が相当浮かれているのを目の当たりにし、自分への牽制は露へと消え失せてしまった。

しかし、だ。


「ねぇ聞いてる?俺、君のことが好きなんだけど!」

「あああああっ、悟天うるさいぞ!ここをどこだと心得てるんだ!カフェだ、カフェ!でかい声で好きとか言うな馬鹿!」


場所が場所でなければ俺だって悟天に好きだとか愛してるだとか歯がナメック星あたりにまでぶっ飛んでいくようなセリフを吐くものだが、ここはカフェだ。物静かな雰囲気と落ち着いた内装が特徴的なカフェで悟天はさもこの世の常識とばかりに俺へ愛を囁いている。しかも悟天の小声ながらもよく通る声と物静かな雰囲気が相まって、俺たちと近い席に座っている人たちには絶賛ゲイだと思われているだろう。いや、実際ゲイなんだけど。


「好きって言えるときには言うもんだって、兄ちゃん言ってたし…」

「ご、悟飯さん……」

「だからさ、俺はいっぱいトランクスくんに好きって言うわけ!」


にぱっと幼さ全開の笑みを浮かべてそう言い放つ悟天にうっ、と言葉が詰まった。確かに悟飯さんの言葉はいいものだがさすがに羞恥というものが俺にもある。しかし悟天は羞恥の念があるかは分からないが一生懸命俺に好きと伝えてくれている。そんな悟天に答えないのは失礼極まることだろうし、本当は俺もたくさん好きだと言いたい。ただ、理性と羞恥が邪魔をするだけだ。
にこにこと邪心の欠片も感じられない無垢な笑顔を浮かべながら最早コーヒー牛乳と化したひどく甘そうなコーヒーを啜る悟天を一瞥し、覚悟を決めるために数回深呼吸を繰り返した。


「すっ好きだぁ!悟天!!」

「へっ!?こっ、声でかいよトランクスくん…!」

「えっ、あ…!」


覚悟を決めすぎたのか割と大きな声になってしまったようで慌てて口を塞ぐ。隔離されている席に座ったことが幸いしたのかトイレから出てきた人が驚いたようにこちらを見ただけで済んだ。一気に顔が熱くなりこちらを見た人にすみません、と小さく謝り肩をすぼめた。


「くそ…かなり恥ずかしい…」

「ぶははっ、トランクスくん力みすぎ!初心だなあ!」


啜っていたコーヒーを置いてまでけらけらと笑う悟天を睨みつけるがまったく効いていない。それどころか笑いの涙まで尻目に溜め始めている。いつまで笑ってんだよ、と怒鳴りつけようとしたが悟天の笑い方があげつらっているというよりも嬉しそうにはにかんでいるように見え、怒る気が萎えてしまった。ふうっと一息ついて火照りを冷ましていると悟天が尻目に溜まった涙を拭きながらぱっと顔を上げたので首を傾げる。


「そんなとこも全部ひっくるめて、俺はトランクスくんのことだいっすきだけどさ!」

「なっ…なに言ってんだよっ!」


今それを言うのは反則だろ!
冷めてきていた火照りが再熱し赤く染まる頬を必死で腕で隠した。そこもまたかわいいと言われ、思わず出てしまった俺の蹴りが悟天の脛に直撃するのだがそこもまたかわいいと言われることになり収拾がまったくつかなくなるのだった。




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