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 もしかして:倦怠期

愛しい恋人と体を重ねた数を指折りで数えてみた。片手の中指が折れたところでそれは打ち止めとなり、がくりと頭を項垂れさせる。
幼い頃から溺愛していたトランクスと晴れて結ばれたのはもちろん嬉しいが、なにしろ行為という行為が少ない。元よりストイックな性格のトランクスと性欲過多と言っていいほど年中盛っている俺では、こういったすれ違いが起きることは予想の範囲内だ。しかしそのすれ違いの隙間は俺の予想範囲を優に超えていた。


「もしかして俺ら倦怠期?」

「なにを言い出すかと思えば…意味分かんないぞ、悟天」

「だって!俺週3ペースでできると思ってたんだもん!」


書類に向けていた目をこちらに向け、眉を顰めるトランクスに駄々をこねる。社長室に置かれた高そうな生地のソファの上でジタバタと暴れて抗議してみるも、トランクスは呆れたようにため息を吐いて書類へとまた目を落とした。


「もん、とか気色悪い…大した用じゃないなら帰れよ悟天、仕事中なんだから」

「やーだよ!俺、トランクスが自ら服を脱ぎ捨てて「悟天、抱いて…」って言ってくれるまで帰らない!」

「どこの安っぽいAVだよ……」


再び深いため息を吐き項垂れるトランクスの呟きにぴくりと食指が反応する。AV、とな。ストイックな彼がAVを観ていることに単純に驚いた。いやまあ健全な男児たるものAVの一つや二つ見ていて当たり前なのだが、トランクスが観ていたと言うとまるで排泄をしないと思っていたアイドルが深夜バラエティで排泄の話をしていたような裏切られた気分だ。要はトランクスに夢を見てたわけだ。
我ながらアホらしく儚い夢だったがトランクスがAVを観て抜いているところを想像してみると、今まで元気をくすぶらせていた俺の息子は下着をぐいぐいと押し上げ膨張していた。少し緩めのジーンズにしておいてよかった、と息子の身を案じ一人ほっと安堵する。


「トランクスはさ、どんなAV観てたの?」

「はあ…?お前、いきなりなに言ってんだよ」

「いいじゃん教えてよ。俺もお勧め教えるからさぁ」

「なにが悲しくて恋人とAV勧めあわなきゃいけないんだ」

「おぉっ!?」


トランクスの口から飛び出た俺たちの関係を肯定する言葉に思わず歓声を上げた。まさかトランクスからデレてくれるなんて。ニヤニヤと口元がだらしなく緩み締まりのない顔になる。トランクスは俺の歓声に肩を揺らし何事かとこちらを見つめていたが、それに一瞥をくれるほどの余裕は俺になかった。ソファの上で転げ回りトランクスの私物であるクッションに顔を埋めて深くにおいを嗅ぎ余韻に浸ると、先程元気になった息子は更なる進化を求めているのかついにジーンズまで押し上げた。海綿体が押し潰されるような痛みに思わず小さく悲鳴を上げ前屈みになりながらソファに倒れ込む。
一人忙しく喜んだり痛がったりしている俺に呆れていたトランクスだが、さすがに身悶えながら痛がる俺を心配してくれたのか眉尻を下げ椅子から腰を上げかけた。


「ご、悟天?おい、どうし…」

「だあああっ!来ないでトランクス、絶対来るなよ!」

「えっ」


こんな立派な息子を見たらきっとトランクスは顔を引きつらせながら脱走用の小窓から俺を放り投げるだろう。それすげぇかっこ悪い、絶対無理。
必死にこちらへ来ようとしているトランクスに制止をかけると思わず必死さが表ににじみ出てしまい、強い口調になった。普段あまり強く言わない俺が発した強い言葉に驚いて目を白黒させていたが、いかんせんプライドの高い俺の恋人はそれが気にくわなかったらしい。父親似の切れ長な瞳を吊り上げ母親似の端正な口元をむっと噤んだ。


「……来るなって言われると、行きたくなるよなっ!」

「わあああもう嘘でしょ!?やばいってマジ!」


書類をばさりと放ってこちらへと飛び込んでくるトランクスを男の性かしっかりと受け止める。しかし押さえ隠していた息子は露わとなり、ひらひらと舞っている書類を尻目に「あぁ、あれが三十秒後の俺か」とやってくるであろう悲劇に備え静かに気を高めた。


「っへ?…ご、悟天これ…」

「ごめん、つい…」

「……」


俺の息子をじっと見つめながらぴきりと固まるトランクスに冷や汗がどっと噴き出る。多分一生分くらいは出てる。さてここで顔を赤くしながら俺の股間に一発拳を飛ばすのか、顔を引きつらせながら微妙に距離を取るのかどちらだろうか。前者はなんだか嬉しいが後者はきついものがある。出来れば妖艶に笑みながら「俺が抜いてやるよ」というような展開が俺を待っていますように。多分絶対地球が滅びようとないだろうけど。


「……」

「…トランクス?」

「……あっ、いや…お前も溜まってるんだよなって…」

「え」


固まったままのトランクスに恐る恐る声をかけてみると、ハッと我に返りおずおずと股間から目を逸らした。なに、その微妙な反応。
もじもじと何か言い出そうとしているトランクスをぽかんと見つめていると、トランクスは意を決したのか俯きながらも目だけをこちらに向け口を開いた。


「………俺の部屋、行こうぜ」


なにが倦怠期だ、俺の馬鹿。
涎がただ漏れになりそうなのを堪え、トランクスを抱き上げて脱走用の小窓から身を滑らせパオズ山へと一目散に飛び出した。


「おい悟天!?どこ行くんだよ!」

「俺、一回トランクスと外でしてみたいって思ってたんだ」

「は!?馬鹿っ、どうかしてるんじゃないか!?離せよ!」

「…そっちから誘ったくせに」

「う……」


でも、と閉じそうにない口を無理矢理唇で閉ざして舌をぬるりと入れ込む。我ながら飛行中の片手間とは思えないほどの濃厚なキスにトランクスが折れかけているのを見てから、とどめと言わんばかりに口蓋を舐めあげた。ふにゃりと完全に抵抗するのを止めたトランクスにぺろりと舌なめずりをして飛行のスピードを上げる。押し潰されている息子が痛すぎて何度もジーンズのジッパーを下ろしかけたが、さすがに窓全開での飛行は誰も見ていないとは言え格好が付かないのでなんとか必死に堪えた。パオズ山につきトランクスを押し倒したところで一度息子の容体をちらりと窺ったが、自分でも驚くほど元気な息子の姿にほっと安堵し心置きなくトランクスに集中したのだった。









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