日記より一部抜粋
○月1日
こんにちは、孫悟飯です。
今日から日記を付けようと思います。とは言ってもなにを書けばいいんだろう?割と筆不精だからなぁ…
とりあえず今日は学校に行った後ピッコロさんに会いに行きました。相変わらず一緒にいても瞑想ばかりだったけど、少し嬉しそうでした。僕も嬉しかったし楽しかったな。
○月3日
こんにちは、孫悟飯です。
今日は学校が休みだったのでピッコロさんに会いに行きました。
「また来たのか」とため息を吐かれたけれど、そんな態度とは裏腹に顔が嬉しそうに緩んでいました。まったく、ピッコロさんは素直じゃないんだから。
そんなところをひっくるめて大好きです、ピッコロさん。って、うわ…なに書いてんだ、僕。でもまあ誰に見せるわけでもないからいいかな。
○月6日
こんにちは、孫悟飯です。日記を書き始めてそろそろ一週間経つのに、未だに日記の出だしの取り方が分かりません。
今日はピッコロさんと久しぶりに組み手をしました。体が鈍っていたのにピッコロさんは容赦なしで僕を負かせました。
両親譲りの負けん気が燃えてしまい、ムキになってピッコロさんを負かせました。大人気なかったかなぁ、僕。
「俺を倒したからと言ってもまだまだ甘い」とピッコロさんは叱咤激励をくれたけど、少し悔しそうでした。でも後ろ姿がどことなくしょんぼりしていてかわいかったな。
抱き締めたかったけど、やめておきました。
○月9日
こんにちは、孫悟飯です。
悟天に日記を見られました。
こういうことを論い笑う奴じゃないとは分かっていますが、羞恥心が燃えたぎり僕の顔で赤みとなってくすぶっています。
とにかく今度から1ヶ月ごとに日記帳を焚書することにしました。死にたい。
○月12日
こんにちは、孫悟飯です。
今日はピッコロさんから会いに来てくれました!といっても修行の誘いでしたが、それでも嬉しいです。
飛んでいるときにピッコロさんのマントが翻り、ちらちらとピッコロさんの肌が覗いているのが見えて少し変な気分になりました。
全裸のピッコロさんよりも、ちらちらと肌を覗かせるピッコロさんの方がやらしいなぁ。そんなことを食事中に思っていたら、お父さんに「なんでニヤニヤしてんだ?」と聞かれました。妄想が顔に出ていたみたいです、危ない危ない。
それはそうと僕は全裸もちら見せもピッコロさんなら大好きです。
○月20日
ピッコロさんに日記見られた。
終わった。
○月21日
こんにちは、孫悟飯です。
一日中膝に顔を埋めて落ち込んでいました。でも思い返すとこれはチャンスですよね!
まったく僕のことを意識してなかったピッコロさんもこれで僕のことを意識し始めたでしょう!
好きなものは好きでいいですよね!
とりあえずこれからピッコロさんと組み手してきます!ボディタッチのチャンス、頑張ります!
○月31日
こんにちは、孫悟飯です。
ピッコロさんにアタックを始めて十日、どうも好感度の上昇は難渋しています。僕の恋、報われるのかな。
まあ人生まだまだこれからですしね!
今日は瞑想しているピッコロさんの隣で僕も瞑想しました。ピッコロさんはなんだか落ち着かない様子で集中できていなかったみたいです。
なにか懸案でもあるのかなぁ。
それにしても日記を始めてみてもう1ヶ月も経つんですね。
とりあえずこれを書き終えたら、一通り読み直して焚書したいと思います。
シャーペンで最後までしっかりと書き込んでから放るようにシャーペンを文面の上に転がした。縮まった筋肉を伸ばすように体を仰け反らせ、欠伸をかみ殺しながら日記帳へと手を伸ばす。
三十一日間も書ききるあたり、己の生真面目さがくっきりと顕れていた。しかし内容はほとんどがピッコロさんだ。ペラペラとページを捲り31ページ目に目を通したところで日記帳を閉じる。
「さて、燃やそうかな」
物騒なことを呟きながら立ち上がり、窓から外へ出る。50ページ綴じの日記帳を半分しか使っていないところで燃やしてしまうのはもったいないが、またいつぞやのように日記を読まれるのはたまらない。気で消滅させてもいいが、一応焚書ということなので燃やすことにした。
思いの外初めての日記は感慨深く、もう一度読み直そうと裏表紙から捲る。裏表紙を捲った先には白紙のページが待っていたはずだったが、決して確かに白紙ではないそのページに目を見張り、大慌てで日記帳を放り投げて地を蹴った。
「嘘でしょう…っ!」
放り投げたそのページの端には、薄くはあるものの綺麗な字で控えめに、確かにそう綴られていた。
俺も好きだ、悟飯
一応、僕の恋は報われるようだった。
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