memo | ナノ


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2012/08/23 03:56




地獄の空気は相も変わらず殺伐としている。濁った空気の中に垣間見える、誰に向けているでもない殺気には肌がピリピリと刺激される。心なしか酸素濃度も非常に薄い気がした。
地獄に堕ちて長いボージャックだったが未だにこの空気には慣れていなかった。皆ある程度の行動を縛られ趣味にも没頭することを許されず、ただ科せられた行為を淡々とこなしていくだけの日々に飽き飽きしていたのだ。ボージャックも行動を縛られるのは不便だと思っているため例外ではないが、周りの者たちよりは不満を持っていなかった。
というのも、ボージャックは生前連んでいたブージンたちとほとんど行動を共にしているからである。もちろん生前恋仲であり仲間内で初めに死んだゴクアもその中にいた。地獄は広いため生前連んでいた者たちとは滅多に会えないそうだがボージャックたちは運が良かったらしい。生前連んでいた理由は不純以外の何者でもないが仲間は仲間、ブージンたちにまた巡り会ったことで地獄もつまらなくはないものになっていた。


「おい、あれ…」


一人で地獄を練り歩いていると辺りから視線が集まって小声が飛び交い、散らばっていた殺気が一斉に集中して向けられる。俺もなかなか有名人になったもんだ。内緒話に花を咲かせている屈強な男共に皮肉を込めて小さく笑って見せる。その屈強な男共はボージャックの煽るような笑みにすぐさま反応し殺意の篭もった熱い視線でボージャックを睨みつけ、まるで打ち合わせをしていたかのようにボージャックを囲んだ。


「一人では戦えない腰抜け共が束になったところで、俺に勝てるわけないだろう?」


無数の敵に囲まれた四面楚歌のこの状況でも怯むことなく、さらに挑発的な言葉を投げかけた。まるでそれが合図だったかのように、屈強な男共は一斉にボージャックに襲いかかる。しかしまさに渾身の一撃といった攻撃をボージャックはすべて何の気なしに受け流していた。戦いの最中に自分の強さを再認識し、優越に浸り、そしてそんな自分を倒した孫悟飯への腹立ちを馳せさせるほどの余裕があった。


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