2012/07/22 00:56
俺の恋人である悟天は変態である。
幼い頃からずっと一緒だった俺たちの心が惹かれあうのはどうやら時間の問題だったようで、昨年に悟天と気持ちを伝え合いつい先日には体を重ねた。そのつい先日に、悟天が生粋の変態であるということが発覚したのだった。普通の恋人同士がするようにキスをして愛おしい体を愛撫し合い、愛撫もそこそこに挿入となったところで自然と俺が入れられる側になり悟天がゴムをつけるのを待った。待ち遠しいような怖いような、複雑な心境であったのを覚えている。しかしそんな純粋な俺の心境をぶち破るかのように、悟天はゴムをつけながら顔のみをこちらに向け、言い放ったのだった。
「トランクスくん、俺駅弁って体位やってみたいんだけど」
性に関する最低限の知識は備わっているが、そこまでマニアックな知識は培っていなかったためそのときの俺の頭にははてなしか浮かんでこなかった。最早こんな有名な駅弁という単語が性的な言葉になるとは思わないだろう。その後悟天に説明を求めると悟天は、さも知っていて当然なことを知らなかったと言われたような食われた顔できょとんとしつつもジェスチャー付きで懇ろに説明してくれた。つまり入れる側である悟天が立ったまま入れられる側である俺を抱えて入れ、そのまま一昔前の駅弁売りのように悟天が俺を抱きかかえながら動作をするという、つまりそういうプレイのようなものだった。
よく理解が出来ず三度ほど悟天に説明をさせたが、理解してしまったときにはもう口を大きく開くほかなかった。幼かった頃のかわいらしく愛らしい悟天は一体いずこへ?時の流れは残酷だというがここまでくると最早凄惨である。しかしすぐに正気に戻りなんとか悟天に「初めては普通にしよう」と説得を試みた。この説得には一悶着どころか何悶着もあり、幾度か双方全裸のまま超化しベッドの上をレスリング上に仕立て上げることもしばしば。雰囲気なんぞクソ食らえ状態だった。だが俺の必死の説得によって渋々「駅弁」を諦めてくれた悟天にほっと安堵するのも束の間、悟天が全裸のまま、全裸で疲れ果てているもう一つ爆弾を落とした。
「じゃあさ、これで俺の手足縛ってくれない?」
悟天は、Mだった。
「駅弁」に対する執念に若干引いていた俺だが、ここまでくるともう時間の経過の凄惨さに祈りを捧げるくらいしかできなかった。確かに幼い頃は俺がふざけて叩いたりすると嬉しそうにしていたが、あれは構われて嬉しかったのではなかったのだろうか。もしかしてあの頃から?ということは俺のせいで覚醒したのか?あぁもう、気になりすぎて悟天の手足を縛る紐が緩んでしまった。ってなんで俺縛ってんだよ!
呆れを通り越して諦めが入りせっせと悟天の手足を縛ることに集中していると、きつく紐を引っ張るたびに悟天から甘い声が聞こえた。どうやら縛られて興奮しているようだ。俺入れられる側なのになにしてんの?と泣きたくなったのを覚えている。
「はあっ…ん、じゃあトランクスくん、俺の上に腰下ろして…」
「腰…?こうか?」
「そうそう、そのまま…俺のを自分の穴に充てて」
「んっ…お、い…無理だよ、入らな…」
その後はその場の雰囲気に呑まれ自ら悟天を受け入れてその体制で二度ほど果てた。一度出したあとゴムを交換しなかったのが祟ったのか、事後悟天のものを抜く際にゴムが外れ若干俺の内部に悟天の精子が付着した。しかしすぐさまシャワーを浴びたので腹痛に見舞われることもなく、ただ腰痛と穴が痛くなった程度で済んだ。これが俺と悟天の初めてのセックスであったが、この入れ方も「騎乗位」という体位の一つでまったく普通ではなかったことが分かったのは随分後のことだった。
そして現在。
俺はすっかり悟天色に染められ、悟天のすること悟天にされることに疑問を抱くことはなく、ただ悟天のされるがままになっている。悟天にこそは言わないが、最近悟天のすること悟天にされることが楽しみで仕方ない。どうやら変態はうつるらしい。
そろそろ悟天が来る頃だな、と求めるように窓に目を向けぺろりと乾いた唇を舐めて潤した。
memo