06餌付け
「あああ!!!ちょっと佐藤まだそれ買わな、」
「あ"?」
急いで購買に駆け込むも時既に遅し。
月一で食べられるかどうか、というレベルに人気のある我高のメロンパン。
カロリー的にも気になり、この間は見逃したのだが。
…完全に失敗した。
佐藤の黒の財布から出された一枚の大きめの銀色の硬貨と、穴の開いた銀色の硬貨がメロンパンと引き換えになる。
「佐藤!!!」
「うっせ、何なんだよ」
「550円出すから、メロンパン譲って!」
「俺は二ヶ月待ったんだよ!」
「こっちだって一ヶ月待ってるし!!!」
「フザけんな、俺はもう一ヶ月長ぇんだよ!!!」
「じゃあ700円で手を打つから!」
「1000円出したら考えてやる」
「それは酷い!あまりに理不尽!」
そう言い、佐藤のメロンパンの袋をガシっと掴む。
「おい!買ってるのはこっちなんだぞ!!!」
「だから700円!」
「それじゃ無理だ!」
「じゃあ710円は!?」
「せめて900円は出せ!」
「900円とかぼったくりでしょ!私今月ピンチなの!」
「俺だって金欠だ、学生の金欠なんて万事の問題だ馬鹿!」
「馬鹿!?それはないで、」
一瞬、時間が止まった…ように思えた。
「おいいいいいい!!!!
袋破れたじゃねぇか!机に落ちただろうが!!!」
「し、知らないわよ!!!大体アンタがキャッチミスするから!」
「お前が掴んできたんだろう!?
もうこの際750円でいいから出せ、買い取れ!」
「嫌に決まってるでしょ!?
机に落ちたのなんて食べる気失せるわ!」
「半分お前の所為だろうが!
………今、すげぇこと思いついた」
「は?」
これはいいアイデアだ、と言わんばかりに半分にメロンパンを切る佐藤。
「何してんの?」
「食いたいだろ、メロンパン」
「だから要らないって」
「でもお前が一ヶ月我慢してきたメロンパンだぞ」
「…うっ」
「欲しいだろ?
…机だって汚いわけじゃねぇし、半分に分けて食うってことでいいな」
「わ、解ったわよ!」
そう言って佐藤から受け取ったメロンパンに腹立たしさに駆られかぶりついた。
「275円になりまーす」
「金取るの!?」
きっちり端数まで勘定しやがって…。
メロンパンの甘さで、何とか財布の寒さをしのぐのだった。