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「…どうしてこうも、情報が出てこないのかしら?」


ついに夜になってしまい、夕食を頂いて案内された部屋へ戻っていた。
二人で一部屋を使い、事件について整理していた。


ここはあずま荘と違って壁が厚く、気兼ねなく話せるからいい。


「何か引っかかるんだよな…」


「二人とも!」


ドアの向こうで、春花警官の声がした。


「凶器と、もう一つの死因が解ったの!」


「凶器ともう一つの死因?」


菜々がドアを開けると、駆け込む形で春花警官が飛び込んできた。


「まず凶器だけど、シェフの所に合ったものだったわ。
調理室の包丁類を調べたら出てきたわ。血は拭き取られていたけどもこの館の主人と一致したわ」


「もしかして、シェフが…」


「いいえ。
食事のときに出したナイフよ、一緒に持っていかない限り殺すのは無理ね」


因みに持っていったのは、大塚さん、と言って続けた。


「まさか!」


「それも、違うわ。
大塚さんでもないの。防犯カメラにもナイフごと皿を持って帰る大塚さんが映ってたわ」


「次よ。死因だけど、大塚さんに許可貰って、司法解剖したの…。
そしたら大量の睡眠薬が出てきて、医師が処方したものって解って」


「じゃ、犯人は…」


「いいえ、医師じゃないわ。
だってその睡眠薬はなくなる度1ケースだけ買うみたいだけど、そのケース以上の量を飲んでいたの。前買ったのは4、5ヶ月前よ。卸売り業者もそう言ってたわ」


「!
まさか、自殺?」


「の線が強くなったわ。
それから林檎も食べてなかったわ、もしかしてシェフが疑われるのを避けるためこの館から離したんじゃないかしら?
でもまだ謎が残るの。
動機と、それからなぜ薬を飲んだのに体を切ったか…」


「体を切ったのは恐らく、見立て殺人をしたかったから…だと思います」


「成程…。
じゃ、薬を飲んだのは…」


「麻酔の代わりじゃないかってのが、医師の見解だってよ」


いつの間に現れたのか、佐藤警部が言った。


「動機はアラクネフィリア」


菜々は続けて言った。


「蜘蛛に対する愛好」


私も続き、最後にもう一度補足するように菜々が言った。


「武呼王のように、蜘蛛に殺されたいと思うくらい蜘蛛を愛していたから」


「明日の朝になりそうだな」


警部の発言に、二人揃って頷き解散する四人だった。


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