いつもと何一つ変わらぬ朝。
きっかり6時に起き、身支度をし、朝食を食べ、歯磨きをし、友人を待つ。 15分ほど遅れてきた友人と他愛ない話をし、校門をくぐる。
騒がしい教室。注意はまだ促されない。 大方は帰宅部か朝練のない連中。尤も自分も今日は朝練が休みだが。
席に着き、本を開く。もうそろそろ注意するやつがくる。
「まーたアンタ等!静かにしなさい!」
「げ、委員長…」 「わーったわーった、退散しますよ」
腕を組み、仁王立ちし注意を促す我Bクラスのドン。 学級委員長という肩書きと共に男子を唯一注意できる存在。 いや、もはや学級委員というか支配者なのだが。
「委員長、抑え目にしときなよ」 「そうだよ、ちょっときついよー」
委員長の取り巻き連中、基委員長率いる女バス組が委員長をなだめる。
その後から後から朝練組が押し寄せ、クラスは更にうるさくなり、委員長の怒りのボルテージも比例してゆく。
しかし今日は、メーターが再度振り切れることはなかった。
珍しく、教師が遅れずにきたのだ。それも朗報をもって。
「今日は大事な知らせがあっからちゃんと聞けよー。 このクラスに転校生が来る…っつうか来てる、速水入れ」
ふらり、と入ってきた茶髪の髪をきつくポニーテールにした女。
「速水です…北里高校からきました、よろしくお願いします」
「女じゃんか、美人じゃね?」 「だよな。しかもマジかよ…北高だって」 「頭いいのにBクラスだぜ…何かあったんじゃねーの?」
「止めとけって…委員長こっち見てるっつーの」 「やっべ…」
「で、いーな?朝霞」
「あ、はい、え?」
男子の会話を聞いていて、すっかり教師の話を聞いていなかった。
「話くらい聞けよー、速水が朝霞の隣だから」
「ああ、はい」
頷けば、速水さんが僕の隣に座っておりどうも、とだけ声をかけられた。
← / →
|