その後、首を突っ込んではいけないと思いつつも何だかんだと二人で考えてしまい、結局5時を回ってしまった。


速水さんはもう既に2時間近く帰ってきていない、明らかにまずいだろうということで探し出そうとした矢先、速水さんが帰ってきた。


「速水さん大丈夫!?」


「気にしないで」


そう切り捨てる速水さんの状況は、正直強がりを言っている風にしか見えなかったし、どうみても大丈夫なんかじゃなかった。


まず、ポニーテールがショートヘアになり変わっていた。
恐らく切られたのだろう…速水さんが気に入っていたであろうポニーテールが暫く出来ないことを考えると心が痛んだ。


それから制服から覗く腕や脚に無数の痣や腫れ、傷が出来ていた。
かすり傷と思われる程度のまだ軽いものから、みみず腫れした痛々しい傷まで。
頬には髪を切られたときついたのか、恐らくハサミなどの刃物類でつけたであろう浅い切り傷さえもあった。


「速水…委員長たちと何があったんだよ」
「アンタたちに教える義理はないわ」


"アンタ"そう形容されて、ズキリと言葉が心に突き刺さった。
"義理はない"…頼りにならない、必要ない、そう間接的に言われている気がした。


「義理はねぇけどよ…。
関係ならあんだろ?…俺ら、速水と友達だったろ?」


訴えるような篤史の発言に、動揺した様に揺らぐ速水さんの瞳。


「止めてよ…それに、私と関わったら…」


不安気な速水さんの顔。こんな時ですら僕たちを危険な目に合わせまいとしているその精神が、僕には有り得ないくらい大きく見えた。


「何だ、速水オマエそんなこと気にしてたのか?」


ケラケラと不安さえ吹き飛ぶかの様な笑い。
篤史はこの状況下であるにも関わらず、おかしそうに笑っていた。


「何で、笑って…」
「オマエ一人で良い格好すんなっつーの。
俺達庇われてるみてぇだけど…生憎必要ねぇな。俺は誰もが悲しまねぇように友達を守りてぇ…戦うんだったら一緒に戦うぜ」


篤史はどこか遠い先を見つめ、キッパリと言い放ったのだった。




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