「速水呼んで正解だった」
「それはどうも」


昨日とは打って変わってすっかり打ち解けた篤史と速水さん。


それもそのはず、北里高校から来た速水さんは勉強が出来る出来る。
αクラスである愛理の三倍のスピードで宿題を終わらせ、指導側に回ったのだ。
篤史含め愛理も僕もお世話になってしまった。


「そうだ、そろそろお茶出そうか」
「ああ悪ぃ頼む」


了解、と返答してお茶を用意する愛理。
お茶を用意する、ということから分かるようにここは愛理の家だ。


「はい」


かちゃかちゃと音を立て、カップが四つほどテーブルに置かれる。


「飲んだら再開するの?」
「うん、もう少しやりましょうか」


・・・


「じゃあ、明日は修平の家ってことで」


「ええ」


「了解。じゃあね」


「また明日なー」


各々がそれぞれの言い方で別れを告げ、今日の勉強会はお開きとなった。


・・・


次の日。


「速水さん、来れないって…」
「え?何で?」


「風邪ひいちゃったって…胃腸炎じゃないといいわね…」


遅れてきた篤史の所為で20分遅れて始まった勉強会。


しかし愛理の報告により、篤史も僕も驚く。


「マジか!
ちょ、後で見舞い行こうぜ」
「うん、何か買ってこうか…」


「私、午後予定あるわよ」


「あ、俺今日歯医者じゃねぇかよ!」


「じゃあ、僕が行くよ」
「家分かる?」
「…あ」


「メアド交換したから、確認しとくわ。
それからお見舞いに行くことも伝えておくね」


・・・


「大きい家だなぁ…」


愛理に書いてもらった地図を見つめ、それから白く大きな家に視線を戻す。


ゆるゆるとチャイムに手を伸ばし、触れる。


「はい…」
「あ、朝霞ですけど…」
「ありがと、今開ける」


カチャ、という開錠した音と共に門がギィ、と音を立て開く。


扉まで歩き、再びカチャ、という音がした後扉を開ける。


「おじゃまします…」
「どうぞ」


ヒエピタを貼った、赤い顔の速水さんが出迎えてくれた。
心なしか足取りもふらついている。


「はい、これ」


「ああ、ありがとう…」


アイスやプリンと言った比較的冷たい品物だったが、大丈夫だろうか。


「迷惑かけて、ごめんなさ…」


そこまで言いかけた速水さんの言葉が突如として途切れ、倒れこんだ。


「速水さん!?」


驚き、言葉を失うことしか出来ない僕なのだった。




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