「…はァ、たったこれっぽっちか」


少数人しか人のいない教室。
というよりか、僕と速水さん、篤史と笹田委員長しかいないという、有り得ないような面子だった。


何でこうも顔見知り過ぎるメンバーなのだろうか。


教師が溜息をつき、渋々といった具合で出席を取る。


「えーっとだな、要するには学級閉鎖だが。
…胃腸炎らしいからみんなも安静にしてろよー」


教師の言葉に、少なからず笑顔が浮かぶ。


「先生、宿題は」
「よく言った笹田、たんまり一週間分の宿題がこれ」


どん、と勢いよく置かれたプリント。
委員長と教師がプリントを配ってゆく。


…結果、裏表両面印刷15枚。


「多い」


篤史の文句が耳に入り、まぁまぁと宥める。


「じゃあ、皆心して宿題に臨めよー」


勉学に励めー、と加える教師。
これじゃあ休んだ者勝ちじゃあないか。何なんだろう。


・・・


「修平、篤史!」
「あ、愛理だ」


こちらに手を振り、小走りでやってくる愛理。
手には見たくもない大量のプリント。


「宿題多すぎだろ…捌けないっつーの!」
「ホントだよね。さすがにこれは…」


宿題を三人とも見つめ、目を逸らす。
出来れば目を背けたい現実だ。


足取りも心なしか重くなる。


「それで提案なんだけど。
三人で誰かの家に集まってやるっていうのはどう?」


「俺は賛成。
αの愛理が居た方が断然いいに決まってる」
「そうだね。僕も賛成」


「じゃあ、決定ね。
あ、速水さん!…家こっちだったの?」


スタスタと僕ら三人を後ろから追い抜いて行く速水さんに愛理が声をかける。


「…ええ」


「そうだ、どうせなら速水さんも一緒に…宿題しない?」


「…私はいいけど。
そっちの子が困ってるんだけど」


篤史が手をひらひら振る。
困ってない、って意味なのかもしれないけど、拒否しているサインにも見える。


「こら篤史!
何で拒否するの?」
「…いや、なんつーか」


「篤史、一緒にやっていくクラスメイトなんだし…仲良くしといた方がいいよ」


渋る篤史にそう言い、それにいい子だよと付け加える。


「…わーった!
一緒にやりゃあいいんだろ!」


少々投げやり気味だったが、篤史の承諾をやっとのこと得られたのだった。




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