曇天2
雲雀さんには基本的に忍耐力というのは備わっていない。と俺は思ってる。
中学生の頃なんか特に『気に入らない』=『咬み殺す』で俺は何回殴られたか知れないし。
そうして凶暴さがおさまった状態の雲雀さんは我慢が欠如してる分、他のひとより更に快感に弱い気がした。
「もう、やめな。も、いいよ」
太ももの間に顔を埋めて、ゆっくり萎えた雲雀さんの雄をいつまでも嬲っていたら、ソレはいい具合に再びドクドク脈打ちだしていたのに。
雲雀さんは鼻を啜りながら懸命に命じる。
「早く…うしろ、してよ」
何となく分かってはいるけど、雲雀さんが俺んとこに、こんな事シにくるのは単に欲を晴らしてスッキリしたいからだろう。
なんで俺なんですか。
聞きたいような。
聞きたくないような。
雲雀さんが出逢った途端に大好きになったリボーンは肉体が赤ん坊だからまず無いとして、例えば山本や獄寺くんとも、こーゆうのしてる、…とか雲雀さん本人に答えられたら、俺は
正直面白くないし。
別に俺が雲雀さんにとって特別な存在になったとはほんのちょっぴりも考えてない、っていってもだ。
絶対雲雀さんには何も聞かない。
雲雀さんに『野暮な子』って思われるのがイヤだから。
俺は余計な詮索はしないんだ。
この人が来なくなるのは嫌だし。
「こ こんな…、きみ、僕に……、」
お尻もイジって、と命令を受けたから、雲雀さんの太ももを大きく左右に割って膝裏を彼自身の手で支えさせると、雲雀さんが恥ずかしそうに俺を責めた。
自ら、お尻のすぼまったトコを「触って」と晒け出す姿勢に屈辱を感じてるみたい。
そんなの本当に今更、だ。
見え透いたそうゆう態度も嫌いじゃないんだけど。
「ん…――」
彼の蕾は固く固くすぼまって、指一本の侵入も容易じゃない。
前回で経験済みだから、俺はベッド下にサッと手をいれて、ある物を取り出した。
「なんだいそれ…」
「ローション」
キャップを外すと、苺の香りがする。
「どうして、そんなの持ってんの」
俺がローション持ってるのが不可解なのか雲雀さんは急に素に戻った。
「ねぇ…」
どうしてって、初めてシた時、雲雀さんの後ろがあんまり引き締まってて、なかなか入れなかったから用意したんだ。
「じぶんで買ったのかい、っ…、ァ……?!」
瓶の口を傾けると、桃色の液がたらたらっと白い皮膚を汚す。
生々しく息づく秘所を人工的な芳香で味付けしてやるのは、少しゾクッとくるものがあった。
「つめたいんだけど」
「自分で買ってないです…ジャンニーニって知ってますか?」
粘着質なローションでぬめる性器を捕まえる。
変な触り心地。
「しらないよ…」
小穴にヌルヌル塗り込み塗り込む、すぼまりを少しずつ弛めるのを意識して。
ぽってりと熱を含んだ性器の周り。
「っ…、ク、……」
雲雀さんの股回りは無残にもローションまみれになっていたが、雲雀さんの纏う、どこか毅然とした眼差しは健在だった。
「そいつは、なんなの」
この質問が何を問うているのかが最初さっぱり分からなかった俺は「は、?」と首を傾げて雲雀さんを見上げる。
大股開きで膝裏を自らの両手で支えたままの恰好で雲雀さんは言った。
「その、ジャン、ニ…?、なんとかっていうヤツ」
「ジャンニーニのことですか??」
俺は早く雲雀さんのソコを貫きたくて、ほぐすのに夢中だったから、ぶっちゃけジャンニーニなんかどうでも良いのに。
「女子?…ア・ぁッ…、っ…」
ぐちゅり。イイ音を立てて、雲雀さんのお尻が俺の指を咥える。
「おっさんです、あたまはポマードでぺったりしてる発明家。雲雀さんも十年後の世界できっと見てると思いますよ」
なんだって雲雀さんがジャンニーニに興味を持ったのか俺は訝しむ。
「ふぅん、…っ」
ぐるりと指先を回したら雲雀さんの内壁がうねる。
「う、」
「いちごのイイ匂い…、ね、雲雀さん」
みずからの白い腿に爪を立てる彼は俺の指の動きに合わせて顔を歪めた。
「いつもこんなの使ってるってわけ…?」
「使うの初めてですよ」
「へえ」
不機嫌と不信感に満ち満ちていた漆黒の眼差しに俺は、(まさか)、と思い(いや…)(でもやっぱり)、と考え直し。
ようやく雲雀さんが決してジャンニーニに食いついた訳ではないと合点がいった。
「あのぅ」
「これ、ひばりさんとスるのに便利かと思って…ジャンニーニに頼んで用意してもらったんですけども…」
けど、失敗したみたいだ。
雲雀さんの眉毛が、中学時代を彷彿とさせる程ムッスー!と真ん中に寄って皺を作った。
急に彼の手が伸びてきたと思ったら、それはもう俺の肩に爪を立てていた。
一瞬あとに、ぎっ、と食い込んだ爪の痛み。
「ひばりさん…いたい…」
「別に僕はそんなつもりで聞いたんじゃないさ…」
雲雀さんが怒っているのは分かったが、俺なんかの手にはすでに負えない。
もしかして、もしかして…と。
俺は、雲雀さんが、ヤキモチを妬いてるんじゃないかと思ったんだ。
自分のいない間に、他の子と俺がいかがわしい事をしてるんじゃないかって、(けどジャンニーニは無い、いくらなんでも)
思い上がりに気付いて、少し恥ずかしくなる。
「早く来たら?」
「へっ」
俺の間抜け面に、雲雀さんはフンと鼻を鳴らした。
「もうソコはいいから、」
「ちょうだい」
苺の匂いにやられたんじゃない。
俺のベッドのシーツに横たわる雲雀さんが両の腿を広げて誘う様に、あたまから湯気が出るほど酔っ払ってしまったんだ。
ベッドの軋んだあとに、俺の下敷きになってる雲雀さんの、息を詰めるような、声にならない声を聞いた。
「ひば、りさん、ちから抜い…!」
黙って耐えようとしていたらしい雲雀さんは俺が熱い蕾に押し入る衝撃にガクンと顎を仰向かせる。
「ア…ァ…、!?」
「う゛」
ローションのおかげでヌルリと入れたものの、窮屈さは前と変わらず。
ギュウギュウと侵入する俺の雄を容赦なく締め上げる肉壁に呻きが漏れ出た。
「…さわだ…」
諦めずになんとか挿入れるところまで入る。
雲雀さんのお尻と俺の腰が密着して、もう完璧にひとつになっていた。
「どんな、かんじ?」
それが聞きたいのは俺のほうな気もする…
「ひばりさんの中あっついです」
「………」
慣れない痛みに耐えて、無理にくちびるを微笑ませてくれる雲雀さんはとても綺麗だと思う。
綺麗なひとだった。
中学生の頃から、このひとは。
威圧感という真っ黒い闇の衣を身に纏って、内側には儚い硝子細工を抱えているような、俺はそんな風に雲雀さんを見ていた。
「動いていいよ」
「はい」
シーツの上でさ迷っていた彼の白い腕が俺の頸に回されて。
情けないくらいひょろひょろな返事をする俺。
最初はゆるゆるっと腰を動かし、弱く浅く結合したからだを揺らす。
「、ぅく…っんん…ん、」
恥ずかしい。
雲雀さんの胎内がぐんとうねり、乗っかってる側の俺が先に鳴いてしまった。
チラッと彼を見たら、気のせいじゃないだろう、雲雀さんは少し細めた優しい漆黒で俺を慈しんでいる。
「…すみませ、俺、きもちくて」
「いいさ。思い切りやりなよ」
こんな殺し文句、似合うひとは他にいない。
**
後悔先にたたずって言葉の存在を彼は知らなかったんだろうか。
それとも、…
「っい、……ッ、!」
「ひた、ひたくないで、すか?」
頸のうしろに回っている雲雀さんの腕が俺をきつくきつく抱き締める。
俺はと言えば、後先も考えないで、彼のからだを好きなように貪っていた。
安いパイプベッドが軋む。
まるで悲鳴だ。
グッ、と奥まで腰を送り込むと端正な顔立ちが歪んで、それでも「痛い」「加減しろ」とは言わないのが雲雀さんだった。
「ぁ…ッ…そこ、もっとっ…」
よいところに当たった俺の自身に、歓喜の声が上がる。
「もっとしてよ」
ひとつしか変わらないのに、ずっと年上の人みたいな濃艶なおねだりに、からだが益々言うことをきかなくなる。
没頭している時って、時間の流れがぽっかり止まっている感じがする。
今、安アパートの一室、俺とこの人の周りだけ、全てが制止していた。
無造作に投げ出された制服の上着も、転がしたローションの瓶も、遠い。
「さわだ」
雲雀さんがどうして俺のところにこういうコトを致しにくるのか、抱いていた素朴な疑問も吹き飛んでいた。
ひたすら猛烈な律動を繰り返す。
「……っ―――!」
そうして、いい加減コツは掴んできた。
超直感なんかに頼るつもりもないけど雲雀さんがいよいよその時を迎えつつあるのも、よく分かる。
彼は、手加減は悦ばない。はず(多分)。
「んゥ、ウ!」
弱点をワザと狙って押し揉むように責めたてる。
雲雀さんが、やだ、と呻いて頸を何度も振った。
さっきまであんなに挑発的だったのに。
「あ゛………っ」
しろい裸体が悩ましく、しなる。
僅かに雲雀さんが退くのを察した俺はつい逃すまい、と力強くあるものを握った。
切れ長の漆黒がぎょ、と見開かれる。
深く貫かれてその上、立ち上がって雫を垂らす性器を掴まれる気分って一体どんなものなんだろうか?
「 さ わ だ 」
雲雀さんの朱いくちびるがやっとの事で紡いだのは、それだけ。
細い髪が汗で額や頬に張り付いている。
「―――ッ」
ドクドク脈打つ雲雀さんの急所を手のひらに包み、しごく。
打ち付ける腰のスピードをあげてギシギシベッドの軋みも、うるさいと思わなかった。
憧れのひとをひたすら蹂躙する加虐的な快感も更に行為を激しくさせるんだろう。
「ちょっと、っ、ぼく―――」
「イきそ?」
泣きそうに眉を歪め、頷く雲雀さんが「やめて」と彼の雄を激しく擦る俺の手に指先を絡めた。
(止められないってば、今さら!)
「なんで、ッだめ…」
自分も吐精寸前だった俺は荒ぶる心そのままに雲雀さんの若い裸体を責め切ってしまう。
「あひ!?」
トドメの一突きで、とうとう俺は堪えきれなくなった。
肉壁の収縮に促され、胎内に飛沫を注いでしまった俺は達成感と、雲雀さんを無茶苦茶に汚した罪悪感、それと一緒に湧き上がる興奮とで我を失っていた。
「は、…ぁ…ぁ………!」
前を弄られ、熱い白濁を奥まで流し込まれる雲雀さんはくちびるを戦慄かせ―――達した。
もし彼が女の子なら盛大に潮を吹いたのかもしれない。
「つなよ、…ひぐ…っ、ふ」
でも、女の子じゃない雲雀さんはぴゅくぴゅくと薄く白い欲を申し訳程度に吐き出して。
潮吹きではなく、体が弛緩した瞬間。
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