博士と勤勉ピーターパン2


雲雀の手をとり、そっと彼の雄を握らせる。
鋭敏にツナの目的を理解した雲雀がふりふりと首を動かした。

「っ、や…きみがするんだよ…」

雲雀曰わく『オナニー』は、彼ほど威厳のある人物になると自らすべきコトではなく、お世話係り(引き受けた覚えはあんまりない)のツナにさせるのが当たり前らしい。

ちょっとソノ気になっては呼び出され弄らされるこっちの身にもなってくれよ、とツナは溜め息を漏らした。

「、自分でしてみてください」
「きみがして…」

くちびるをキュ、と結び雲雀は一歩も譲らない。

(かわいいけどさ)
しかし、ツナも今日は頑なである。

「だめです、ちゃんとひとりエッチできるようになんなきゃ」
「僕はそんな、はしたないコト、しない」
「そ、ですか。…俺はしてあげませんよ」

雲雀の座る椅子の背もたれに片手をかけ、ツナは間近で、ひたすら自身を扱くのを見せつけてやる。

「……ムカつく」

ほんの少し歪んだ雲雀の眉。
が、形ばかりの意地だった。

うぶな性器を握らされた形で止まっていた雲雀は、こらえ切れないで手を動かし始める。

「ん…」
あまりにも遠慮がちで拙い愛撫。
ツナは耳元に囁く。

「雲雀さ…いつも俺がするようにしてみて」
「分かっ、てる」

聞こえるのは自分達の熱い息遣いとストーブの音だけ。

「あ。あ、ぁ」

熱に浮かされたような、とろけた顔は暖房のせいではなく。
雲雀の雄をしごくスピードはどんどん増していった。

ツナがいつもしてやった愛撫を思い出し、一生懸命に真似てみる雲雀はなかなかに健気だ。

弱く強く、根元から擦りあげ、指で輪っかを作り、上下に何度も動かして。

雲雀が自分のペニスを容赦なく攻め抜く淫らな様にツナは圧倒される。

(やべ。俺の目の前でひとりエッチする雲雀さんとか…すげぇ…)

「やらしいです……雲雀さん」
「っうるさ、」
「きもちイ でしょ?」
「……」
ニチュ、プチュ、粘着質な水音も興奮を煽る。

ツナの問いかけに返事はないが雲雀は涙の膜をたっぷり張った瞳でツナをじ、と見詰めてきた。

「雲雀さん」

何を思ったか、ツナはマスターベーションに励みつつ、姿勢をかがめて雲雀の鼻先に自分の鼻をくっつけた。

(うあ 雲雀さんがこんなに近い)

雲雀を厄介な存在と思うのも、可愛いと思うのも、いつもこんな風に突然だ。

(イイ、匂いする…シャンプーの匂いかな)

「…、……」

意外にも雲雀はツナの顔を避けたりしないで、そっと白いまぶたを伏せた。
額と額をすり寄せて、ひたすら自慰に勤しむ。

下肢を襲う快感がふたりの感覚を麻痺させているのだろうか。

「あッ、はァ…さわだ、ぼく…もぅ…」

突如として、切なく歪む雲雀の表情にツナの鼓動が跳ねた。
射精の時が迫り、雲雀の指がより素早くスパートをかける。

「待って、俺まだ。いっしょに、一緒に…」
「でるっ。ぼく、でる…っ」

雲雀の太ももは左右に開き切り、黒髪がイヤイヤと揺れる。
それでも手を休めない雲雀。

晒けだされたままだった乳首にストーブの赤みを帯びた光がさしている。


「さわだぁ…だめ、ンンン!」

(!? エロっ…!)

「あ、俺も …イくかも!」

雲雀の絶頂寸前の顔にやられてしまった。
先端がぎゅぎゅっと熱くなり、込み上げてくる波。

「ふぅ ぅうんッ」
「んく!」


向かい合って、掌の中へと白濁を発射したのはほとんど同時だった。

「あ ンっ、や… はぁあ…ッ、!」

ぴゅくぴゅく淫水を噴きあげ、雲雀は大きく身を揺らす。
椅子から落ちるんじゃないかと心配したほどだ。

「はあ…ふう………」

射精し終えると、ツナも雲雀も放心してしまった。
くてん、と雲雀が脱力して、前に立ったままのツナの体にもたれる。

「いっぱい出ちゃいましたね…」
「……」

ふうふうと息をつくだけの雲雀は、そのまま何も言わず―――数十秒後。

「! せいし、っ」
「は?」
「せいしを見なきゃだよ」

「あいた!」

何故か、あたまで胸をゴンと突かれてしまった。

あっという間にむっすり顔に戻る雲雀の変わり身の早さは毎度素晴らしい。
ぐちゃぐちゃに濡れた手で綿棒を持ち、ツナの掌と自分の掌に付着した精液をチョイと掬い採った。


「せいし、採取完了。きみ、電気つけなよ」
「ハ、ハイ」

ツナはその辺にあったティッシュで手を拭いスイッチを付けてカーテンを開けた。
パッと明るくなる理科室。

窓の外に、グラウンドで練習する運動部員たちが見える。

今までの出来事が何だか夢みたいだ。


「雲雀さーん、どぅですか?」
「今見てる。待って」

雲雀は着衣を整えつつ真剣な面もちでレンズを覗き、鏡の角度を調節している……

「む! …ワォ…!」

「見えました?」

あの雲雀が、驚愕している。
ツナも顕微鏡で精子を見るのは初めてだ。
興味深げに雲雀のそばに寄った。

「彼ら、すごい早さで、泳いでいるよ」
「マジで!?」

交代でレンズを覗くと、ツナの想像を超える異常な量のオタマジャクシが所狭しと蠢いていた。

「ねぇ。この子たち、なんなの?生きてるの?」
「赤ちゃんの元になるんですもん、そりゃ生きてんじゃないですか?!わぁ、すっげ元気!」

「赤ん坊のもと??」

「これが女の子のからだにはいって受精したら、赤ちゃんできるんですよ」

事も無げに告げるツナに雲雀はぽかんとしていた。

「この子たちみんな、赤ん坊になるのかい」

(そんなバカな)
とんでもないことを言い出す雲雀。
全部の精子が着床したら、地球上は人類で溢れかえってしまうだろう。

だがピーターパン雲雀に罪はない。
すべての責任はゆとり教育にあるのだから……


「違いますよ。精子はいっぱいいるけど、子宮まで辿りつけるのは、ほんの少しだけなんですって」
「しきゅう??辿り着けない子はどうなるんだい」

「そりゃあ……消滅?」

「成る程。強いやつだけが生き残る、精子の世界も僕らと変わらないな」

雲雀は感慨深く顕微鏡を覗いて、ツナに向かい、言った。


「精子を女子にいれるって、どうやっていれるの?」
「ハハハ……」

(ついに本題に来ちゃったぞ)

「あ、」
「?」
「泳がなくなってきた」

とうとう、元気だった精子たちも最期の時を迎えてしまうようだ。

「結構はやく、ダメになるもんなんですね」
「違う。今動かなくなったのは君の精子だよ多分」
「混じってんだから、どっちのかなんて分かんないじゃないですかー!」


そうやって騒いでる間に、精子たちは全員、完全に停止してしまった。

「…僕らの精子たちは、どこにも行けずに終わったんだね、」
「そ、ですね」


「儚いね」

「そう、…ですね」


雲雀が、深く息を吐いた。

「俺、片付けましょうか」
「うん。頼むよ」

ツナが机の上の実験用具を綺麗に洗って片付ける隣りで、雲雀はぼんやり物思いに耽っている。
いつも通り無表情。


ツナはふと、思いついた。


「ね、雲雀さん。今度俺、子供の作り方詳しく教えてあげましょうか?」

長い前髪の隙間から、雲雀の不思議そうな目がツナに向いた。

「うちじゃマズいから、雲雀さん家にDVD持って行っていいですか?それみて勉強したいんですけど」

「僕は構わないよ」

色好い返事。
淋しげな空気は和らいで。

ツナはへらっと笑い、雲雀も不敵に微笑んだ。


「楽しみにしてるよ、物知り博士」
「はい、雲雀さん」


(勉強家なピーターパンだ)

面倒くさくて、ヘンテコで、ほっとけない先輩、雲雀。

(……観念すべきかなあ、俺?)


物知り博士ツナは、まず自分が彼のことをどう見て、どう思っているのか。

家に帰ったらそれを第一に研究しなければいけない事をようやく自覚した。





おわり

***


2010.12.30

淋しさをおぼえる雲雀さんと、雲雀さんの微妙な気持ちに敏感になりつつあるツナ。
距離的にはだいぶ近づいた…かなあ?


次回は新しく雲雀さん家でお勉強をする予定!






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