執事と僕と、内緒の×××(過去拍手小説)

※ヘンなつなひばです。微裏的
旧拍手小説





雲雀視点






執事と僕と、内緒の×××





「坊ちゃま、例のモノをお持ちしました」

「ん。そこにおいといて」

ひとりの長身の男が、テーブルに数冊の雑誌を置く。

雲雀は優雅に紅茶を味わい、横目で男をちらりと見やった。
今日のおやつは、イチゴのミルフィーユ。
有名パティシエによって生み出されたミルフィーユに夢中だった雲雀の、俄かに緊張を帯びだした指先に男は気付いただろうか。

「……」

男が此方を見ていない隙に、紅茶の最後の一口をササッと一気に流し込んで。
雲雀の美しい指が、三冊積まれている雑誌のちょうど真ん中のそれを――チラッと捲る。


「!!」
「坊ちゃま」
「ッな、なんだい」
「そろそろ、お勉強の時間でございます。お部屋に戻られては?」

は、と息を吐いて、雲雀は男を見上げた。

「うん。そうするよ、綱吉」

雲雀の執事、沢田綱吉は柔和に微笑んだ。
うまく、いつも通りに答えられたと思う。

雲雀は慎重に三冊の雑誌を小脇に抱え、綱吉の引いた椅子からゆっくり立ち上がった。



**


主人である雲雀は、綱吉の数歩前を凛々しく颯爽と歩いている。
斜め前、自分より遥か低い位置にある頭の丸い形や少し長めの襟足など、とっくに見慣れている主人の後ろ姿が愛しくてならない自分はどうかしてしまっていると思う。

「夕食の時間に、お迎えにあがります」
「うん、頼むよ」

そそくさと、雑誌を抱えた主人は部屋に引きこもった。

カチャリと鍵の降りる音を確認すると、綱吉は雲雀の部屋の前から姿を消す。

誰にも知られぬよう慎重に、気配を消して。

向かうは屋敷の屋根裏。

立ち上がれる高さはない。
匍匐前進で目的地まで進む。
天井の板から微かに漏れる光。
小さな穴が開いているのだ。

綱吉は琥珀色の瞳を片方伏せて、穴を覗く。
長い前髪が邪魔でかきあげた。

階下では、雲雀がベッドに腰を下ろし、雑誌を手にしている。

雲雀の、自室の真上。
ここが綱吉の秘密の隠れ家だというわけだ。

何も知らぬ雲雀をこうやって観察するのが綱吉の唯一の趣味であり生きがいだった。


雲雀は迷いなく真ん中の雑誌を引き抜くとそれを挟んでいた上下の雑誌は用済みとばかりに無造作に投げ置く。

現れたのは、何人もの美女がふしだらな姿で睦みあっている写真が表紙の、いわゆるエッチ本。
雲雀は、禁欲的にきつく締められたネクタイを片手でゆるめると、パラパラとページを捲り始め、惹きつけられる写真で手を止めて、見つめている――

(恭弥坊ちゃま)

彼のかすかな息遣いが聞きたくて、綱吉は出来るだけ息を潜める。
天井裏からでは頭の頂しか見えず、雲雀の表情はわからない。


どんな顔をして、あのいやらしい女性の裸を見ているのだろうか。
気品ある端正な顔立ちが、興奮に染まるのを一度でもいいから、間近で見たいと綱吉は望んでいた。


「ん……、」

綱吉が天井から見守る中、雲雀はついにベッドから腰を浮かせ、手早くベルトを外して膝までスラックスと下着をおろす。

「……」

お気に入りのページを開け、繰り広げられる1人遊び。
数分も経たないうちに、卑猥な水音が響き始めた。

「んんん…」

自分の責めに必死に耐え、それでも抑え切れない甘い喘ぎが、綱吉の脳から腰までを狂わせる。

(あなたに触れたい)

(もっと、近くに行きたい)


自身の下肢に手を伸ばしながら、綱吉は罪悪感と背徳感の狭間に身を任せた。
だが、見る間に絶頂を迎えた雲雀は綱吉を置き去りにひとり白濁を放ってしまう。

(あ、恭弥坊ちゃま……)
一緒にイけなかったことに落胆しつつも、雄を嬲る手は休めない。


満足した主人はころり、ベッドに横たわった。

濡れた秘部が丸出しになり綱吉はうっと息を飲む。
まだ完全に反応が治まらずに硬さを保つ、雲雀の幼い雄の証。

気怠い仕草はまるで綱吉を誘うようで、そうではないと自身に言い聞かせながら、彼を夢中で視姦する、

が。


次の瞬間、綱吉の瞳は限界まで見開かれた。





**

※雲雀視点









からだの成長は、厄介なものだった。

雲雀は執事の用意した、はしたない雑誌を食い入るように見ている。

エッチ本など持ってくるよう命じた覚えはないのだが、今では定期的に綱吉からコレを渡されると一通り気が済むまで、他には何も手につかなくなってしまう。

紅潮し熱を帯びる頬を手の甲で確認し、雲雀は鍵をかけた部屋で下肢を露わにした。

(こんなもの、)

馬鹿にしてはいるのに、からだの反応は騙せない。
半勃ちのソレを焦らすように触って、吐息をひとつ。

父も母も知らない。
この本のことは、綱吉と、自分だけの秘密。

「んんん…」

ぷちゅくちゅと嫌な音がなる。
竿先から汁がもれてゆく。

気に入ったページに視線を走らせ、雲雀は己を慰めた。

「……、…あぁ」

うなじがカアッと熱くなり、膝がカクカク揺れる。
どうしようもなく込み上げる興奮。


(きょうも、いるね)

原因は自分の真上に、感じる気配だった。

(綱吉)

いつからか始まった歪な彼との関係。

(もっと、僕を見てよ)

自分が用意したポルノ雑誌で自慰に励む主人の雲雀を、天井に隠れて眺める執事は、どんなことを考えているんだろう。
とても、興味がある。

できるなら。

(おりてきて、僕を抱き締めなよ)

「ふ、ンンッ!!」

欲望をティッシュに吐き出した雲雀は、それをゴミ箱に投げ棄てベッドに横たわった。
スラックスもパンツも膝に引っ掛けたまま。

なるべく、しどけなく、扇情的に見えるように。
天井に向かって、雲雀はくちびるを動かした。



( あ な た は み て る だ け で ま ん ぞ く な わ け ? )




臆病で歪んだ彼らの行く先は彼らのみが知る、




おわり

***







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