0109

「…誰かと思ったら。今日は休業だぞ、モブ」
「じゃあなんで師匠、ここにいるんですか」
「休日出勤ってやつだよ」

はぁ、白い息を吐くモブの鼻先は赤くなっていた。
携帯に連絡も入れずにやってくるなんて、随分突飛な訪問なこった。
モブが僅かにマフラーに口元を埋めたので、まぁ入れよ、と腕を引っ張る。
ぱたんと扉が音を立てて閉まった。

「どうしたんだよ、こんな時間に。もう日暮れるぞ」
「師匠がいるところ、ここしか知らないから。…あ、明けましておめでとうございます」
「おう。明けましておめでとう」

律儀にお辞儀をするものだからつられて少し頭を下げる。
モブは手袋をはずしてソファに座った。
俺は座らずに暖房を入れた。
モブは俺の手元のリモコンを見つめる。

「ずっとここにいたんですか」
「うん?まあそんなところ」
「師匠、お正月ですよ。家に帰らないんですか」
「だから、休日出勤だよ。お年玉はやらねーぞ」
「師匠」
「なんだ」
「…初詣、行きませんか」

モブは俺を見上げて言った。
…こいつ。
少し笑いそうになるのを堪える。

「今日元旦だぞ。家族、ほら弟とか。いいのかよ」
「遅くなるって言ってきました。御節は昨日律達と食べました」

しれっとした顔、とまではいかないが少し得意気な顔で言う。
これで俺がここにいなかったらどうするつもりだったんだ、こいつ。
黙った俺に焦れたのか不安に思ったのか、「だめですか」と揺れる声で言う。
期待と不安の眼差しが痛い。
よく言うよ。
俺が相談所にいた時点でわかってた癖に。

「…屋台、食べ歩きしようぜ」

リモコンで暖房を切って、コートを羽織る。
モブは慌ただしく立ち上がった。
心なしか赤いモブの耳たぶがやけに目について、お互い重症だなぁと少し笑った。



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明けましておめでとうございます!
お互い会いたくなった霊モブ
ばればれでもお互いなにも言わない。モブは自分はばれてないと思ってる
つかず離れずも好きです
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