0109

あっと思った時には、師匠の手は制服のワイシャツのボタンに伸びていた。
どうしよう。どうしよう。
「モブ」と呼ぶ声が優しくて、でもちょっと焦りがちらついていて。
やめて、の一言も言えなくて手が震える。
骨のかたちのわかる大きな手。
ひんやりと冷たい手が隙間から鳩尾をなぜる。
びくっとお腹がひきつった。
デスクの上で爪がたてられる。
ちゅ、と首筋にリップ音。
ぎゅっと抱き締められて、相手は師匠だ、なのに物凄く、あれ、師匠なのに。


兄さん。
ああ、やめてよなんで。
律。
こんな…こんなの間違ってる。


「しっ…ししょ、ぅ…!」

振り絞った声は掠れて喉元で絡まった。
師匠はビクリと動きを止める。
違うんです。そうじゃない。そうじゃないんです、師匠。
口の中が苦酸っぱい。
兄さん、兄さんと頭の中で不気味な不協和音ががんがん鳴り響く。
気持ち悪い。
空っぽのからだからなにかが溢れそうで、沸いて出てくる唾液を必死で飲み込む。
ああ、僕は、ごめんなさい。

「…すまん」

ちがうんです、師匠が悪いんじゃなくて、僕が、僕が。
そんな顔しないでください。

「ち、がうんです、ししょ」
「急にごめんな。そりゃ吃驚もするだろ。モブ、そんな顔すんなよ。すまん」

師匠は苦笑して僕の頭を撫でる。
僕が悪いんだ、と言いたくても、でもやっぱり言えない。
どうしよう。どうしよう。

兄さん、と呼ばれたあの日。
混乱と熱気と恐怖でぐちゃぐちゃな中で、やさしく微笑したあの日。
口元を押さえた代わりにぼろりと意味のない涙が零れた。



…こんなの、あんまりだろう?律。



----------
律モブレイプからの霊モブのネタ
相変わらず意味不明
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -