face="MS P明朝">聖夜の鐘を掻き消して
ナルトは憂鬱だった。
楽しそうに笑い合うカップルとか、そういうのを昼間から見せ付けられたからだ。
12月24日。カップル達の重大イベント。
子供にとっても重要な日だろう。
「はぁ…」
また今年も一人、か。
呟いて飾られたモミの木を恨めしげに見る。
自分と親しい友人達も、今日は家族と過ごしているのだろうと窓の外を見遣る。
こういう時ばかりは、自分の親が憎くなるナルトだった。
「……暇だってば…」
イルカ先生とか、来てくれたっていいじゃないか。
そう思ってぷくっと頬を膨らませながらベッドに寝転がった。
こういう時は、寝てしまえばいいと長年の経験によりわかっていたからだ。することもないのに起きていてもさらに憂鬱になるだけ。
部屋の電気を消して、ナルトは意識を闇に沈めた。
*******
「ナルトー」
アパートのドアの前。
フードを被った少年がインターフォンを鳴らす。
「…………」
出てこない。いつもなら出てくるのに。
ならここにいないのか?
思考を巡らせて辿りついたのは、ナルトが寝ている、だった。
少年はドアノブに手をかけて開け!と念じながらゆっくりドアノブを回す。
「…開い、た」
ナルトの警戒心の少なさに少年は心配になりながら部屋の中へ足を進める。
少年は、ナルトのいう親しい友人達の中の一人。
といっても少年自体はそんなこと思っていない。
友人という関係よりも深く濃い、そんな関係を望んでいた。
「おーい、ナルト?」
部屋のベットですやすやと寝息をたてて穏やかな表情で眠るナルトに少年は生唾を飲む。
なんて無防備な姿だろうか…。手を伸ばして、口づけて、自分のモノだという印をつけたい。
そんな衝動に駆られる。
白くきめ細かい肌に触れたい…。恐る恐る手を伸ばして、あと少しで触れられるというところで、少年は我に返った。
「…っ、ナルト!起きろって!
あまりにも無防備すぎて、いつ襲ってしまうかわからない。
傷つける前に起きてほしいとナルトの身体を揺らす。
「…んっ……ふあぁ、キバ…どうしたんだってば?」
目を擦りながら、覚醒しきっていない頭でなぜ少年、キバがここにいるかを考える。
今日は、クリスマスイブだ。
「クリスマスパーティーとか、なかったのかよ?」
「なかったわけじゃねぇんだけど、ちょっと抜け出してきた」
にっと笑うキバにナルトは首を傾げる。
(抜け出してここに来てくれたのは嬉しいけど…)
「抜け出してまで俺んとここなくてもいいって!」
本当は、いてほしいけどそんなこといったらきっと…
ちくりと痛む心臓。
迷惑はかけられないという遠慮の心。
「何言ってんだよ!お前いっつも一人で今日みたいに寝たりしてたんだろ?お前イベントとか好きなんだから、もっと他の奴らに迷惑かけるぐらい騒いだっていいんじゃねぇの?」
それがいつものお前だろ?
そう言うキバは笑って赤い包みをナルトに差し出した。
「これは?」
「クリスマスプレゼントだ!あ、開けんのは後でな!」
じっと箱を見ていたナルトにキバは箱をテーブルに置かせる。
「んー、クリスマスに何もねぇのは寂しいよなぁ」
生活に必要のものくらいしかない部屋を見渡して何かできないかと頭を悩ませる。
ナルトはそんなキバを見ていて、心が温かくなった。
「…キバ、」
「ん、何?」
「ありがとうってばよ!」
ふたりぼっちのクリスマス。
「気にすんなって!誰だって一人は寂しいだろ?」
トクン、と鳴る心臓。
ナルトには分からない感情だった。それでも、
心の穴が少しずつ、少しずつ、塞がっていくような気がした。
「やっぱりナルトには笑顔が一番だぜ!」
「へへ、じゃあずっと笑顔でいるってば!」
無邪気に笑い合うことが出来れば、
それはもう、カップルと同じくらいに幸せな聖夜だった。
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甘いような…?
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