適当に注文をして、近くにあった四人テーブルに座ると息を吐く。ちなみに席は俺の隣が新羅。俺の目の前が静雄くんでその隣がドタチンだ。
「入学式疲れたね」
「全くだな」
「てかそもそも」
俺たち放置でドタチンと新羅は喋ってるしさ。良いよ、俺だって静雄くんとお話するんだから。
「静雄くんって、顔に似合わず甘い物好きなんだね」
「……」
「あ、別に悪い意味じゃないから。ただし、糖分の取りすぎには注意だよ」
「…分かってる」
こんな甘党が自販機持ち上げる…ね。確か行く時に新羅が「彼は短気だから怒らすと大変だから挑発しないでくれよ」て言ってたから無理には喧嘩売る事はしないけど。
「中学の時、喧嘩ばっかだったんだってね」
そんな事を言えば少し不機嫌そうに眉が寄る。
「…暴力は好きじゃねぇ」
「だろうね。君って外形は喧嘩とかしない普通の学生みたいだし」
まあ俺的には、君が大暴れしているところは見たいけど。自販機とかポストでも持ち上げて見せて欲しいもん。
「あ、静雄くん。こいつ危ないからあまり関わらない方が良いよ」
「あのね新羅。俺と静雄くんが喋ってんのに割り込むなよ」
空気読めない奴だな本当に。
「君の良いところなんて無いじゃんか。人間が好きだとか言って貶めたりなんたり、最低最悪だよ。一応誉め言葉で」
「意味分かんないし。君だって首無しで欲情するんだから気持ち悪い」
「セルティを侮辱かい!?君にはセルティの魅力はわからないんだ。あのスラッとしたボディラインに…」
あーうるさい。
彼女の事になると延々と話続けるんだからまじ勘弁して欲しいよね。
「静雄くん。この後暇?」
「あ?ん、まあ」
「じゃあこのばか置いて二人でどっか行かない?あ、ドタチンは馬鹿に入ってないから」
「なんか複雑な気持ちだな…」
隣で首無しについてペラペラ喋っている新羅を放置して、静雄くんの腕を引いて外に飛び出した。
「で、セルティは…ってアレ?臨也と静雄くんは?」
「二人でどっか行ったぞ」
「え?ああ、そ。じゃあ僕たちも早く食べてどっか行こうか」
「…あ、ああ」
「どこに行くんだ?」
静雄くんの腕を引いていると後ろからさっき飲み途中だったシェイクをキュイキュイ音を立てながら話かけてきた。
「何処行こうかー」
「決めて無かったのかよ…」
「だって、うざったい新羅の話なんか聞きたく無かったし。静雄くんは何処行きたい?」
「お前が行きたいとこで良い」
俺の行きたいとこか。
人間がいっぱい居るところなら何処でも良いかな。
そんな事をのんびり考えていたらいかにもチャラそうな奴らが周りに集まって来た。
「あれ?」
「おい平和島、見っけたぜえ」
「この間は良くもやってくれたじゃねーか」
あーあ。
「お前逃げろ」
「え?」
「アイツら俺狙いだし、手前ぇを巻き込みたくはねぇし」
「…静雄くん優しいね。いいよ、俺だって強いんだから」
「いや…お前明らかにひ弱そう…」
「失礼な!君より強くは無いけどなかなかなんだからね」
そう言いながらチラリと制服に忍ばせてあったナイフを見せる。
「…殺す、なよ?」
「まっさか!殺すわけ無いじゃん、っと」
話してる途中で、金属バットを持った男がこちらに向かってバットを降り下ろして来た。人がお話し中だってんのに来るなよ、お前も新羅と同じで空気読めない奴だよ。死ね。
「なんだあ?このひ弱そうな奴も平和島の味方かよ」
ひ弱そ…っ!
みんなして俺をひ弱扱いしやがって!
むかついた。俺だって伊達に喧嘩してないんだからな。
「……」
「っ…?な、なんだ?服が切れた…」
そりゃナイフで切ったから。もちろん相手には見えない速さでね、
「ほら?やればできるだろ?」
「じゃ、俺の後ろ頼むわ」
「まっかせといて」
それからだ。
彼はあいつらに殴りにかかると、あろう事か人間が飛んで行っていた。それでいて…、
「うおりやああああああああ」
自販機を、持った…。
(うわーほんとに持ち上げるんだ)
それを相手に投げつけて、俺も負けじとナイフで死なない程度に切りつけて相手の攻撃も軽々避ける。ああ弱いな。なんて思ったらもういつの間にか周りに人は居なくなってた。
「俺も戦力にはなるでしょ?」
「助かった」
「ほぼ君がやったもんだけどね」
そうしてまた何事も無かったように池袋を歩き出した。