「ああ、お前も可哀想だねぇ」
誰にも愛されずに死んで行く。
死んだ黒猫はボロボロで、人間に虐待をされたんだろう。
ああ、可哀想。
可哀想に、
「人間に踏み潰されて死んだのかい?君もこんな場所にさえ居なければ死なずに済んだかも知れないのにねえ」
不運だったね、
抱き抱えた猫を持ちながら裏路地から抜けると太陽が顔を出す。
ほら、優しい優しい俺が、君をこの素敵な天気の前に出してあげたんだ。感謝しておくれよ。
「まあ…死んだ猫が蘇る事は無いだろうけどね」
そう小さく呟くと池袋の街を歩き出す。
ああ可哀想。
可哀想に。
君を見てると自分を思い浮かべてしまうんだ。自分と同じに見えてしまうんだ。馬鹿みたいにね。
チリン、と鈴が鳴る。
さあ君を連れて何処に行こうか。
誰にも愛されずに死んだ君と、誰にも愛されない俺と、一緒に。
「いーざーやーくぅーん!池袋に何しに来てんだあ?ああ?」
「君はやっぱ不運だね。死んだあとでも、あの単細胞と出くわすなんてさ」
「何喋ってんだよ!良いから死ねノミ蟲がああぁ!」
ポストを軽々と避ける。
軽い足取りで走り出すと、いつもみたく追いかけっこの始まりだ。
不運だね。
今俺は、君を投げ捨てる事だって可能なんだよ?
はは、そしたら不運な君は車に轢かれて終わりかな?あははっ。
「…にゃあ」
小さく。
動く度に鳴る可愛らしい鈴の音と一緒に微かに猫の鳴き声。
いや、まさか。
だって、
「…生きてる?」
「…ぅにゃあ」
こりゃあ凄い。
死んでたと思ってた猫がまさか生きていたとはね、
「生きたいかい?」
「にゃあ」
「…そうか、」
俺と同じ赤い目。
まるで自分が自分を見ているみたいだ。
「じゃあもう少し、俺と生きてみようか」
「にゃあ」
愛されずに生きる俺たちで。
路線変更、
立ち止まって黒猫を抱いたまま、シズちゃんに向かって走り出す。
「な…?」
「ざぁんねん!君に構ってる暇は無くなったんだ」
呆けてる彼の隣を走って知り合いの家に直行だ。
ああ、優しい優しい俺にいつか猫の恩返しをしてくれよ。
「臨也!てめっ」
「知り合いの家までもってくれよ」
「にゃあ」
君が誰も愛されないなら俺が愛してあげよう。だから君も俺を愛してくれ。
(ああ、今日も天気は良いね)
死んだ愛と黒猫
(ああ可哀想。)
(可哀想、俺たちって)
アニメみたらかっこいい臨也君を書きたくなったのが本音。