7 | ナノ






昨日、友人にシズちゃんが好きだと泣きながら言った俺は、日が明けて恥ずかしさにベッドから起き上がりたく無かった。
あー黒歴史だ。史上最悪の黒歴史だ。
そもそも、人間を特定で愛するということ自体が俺の失態と呼ぶべきものだ。俺は人類を愛していた。誰かを特定するものではなく、人間そのものを深く愛していた。それが一人を愛する事によって、俺はもう人類を愛せやしない。だからと言ってシズちゃんを嫌いになんてなれない。

俺の初恋と呼ぶべきこれは、もう壊れ初めて居るのだけど。

(学校…行きたくない)

シズちゃんに、会いたくない。…なんていうのは嘘になるんだけど…会っても今更過ぎて何をどうすれば良いのか分からない。しかも相手は好きな人なわけだし。
矛盾してるなぁー俺。
これが恋する乙女ってか。いや俺乙女じゃないし。

「あーもう!」

何一人でボケて一人でツッコんでるんだ!
頭までおかしくなったのかなあ。
枕に顔を沈めながら両足を子供みたくジタバタさせていると、母親が部屋に入って来た。

「ほら臨也、もう遅刻になるわよ」
「今日学校行きたくない…」
「何かあったのー?昨日、目真っ赤にしながら帰って来たじゃない。苛められてるの?」
「そうかもね…。学校には適当に理由つけておいて」

何か色んな意味で苛められてるよ。
母親はため息を吐きながら「遅刻します、とは言っておくからね」と言い残して部屋を出て行った。
遅刻も何も行く気ないし。

時刻は八時になっていて、ぼーっとしながらベッドの中に居ると、ベッドの近くの棚に置いてある携帯が鳴り出した。ディスプレイには"新羅"の文字。
出なくて良いかな…。
どうせ仮病なの知ってるだろうし。
いいや、と諦めて携帯をまたタンスに置こうとするとまた携帯が鳴る。イラついて電源切ってやろうと開いた携帯のディスプレイには、"シズちゃん"の文字が表示されている。

「シズちゃ…」

なにそれ!え、何でシズちゃんから電話来てんの?
さっきとは打って変わり、心臓がバクバクしてる。やっぱりこれが好きって事なのか…あーもう恥ずかしい!
出ようか迷っていると、すぐに留守番サービスに繋がってしまっていた。どうやらそこで留守電を入れたらしく、俺は震える手でシズちゃんの伝言を聞いた。


「……」


聞き終えた俺は直ぐ様いつもの学ランに着替えて家を飛び出した。高鳴る胸の鼓動と、顔が真っ赤なのはきっと無愛想な彼の短い言葉。

(楽しみ。凄い楽しみ)








『臨也、早く来い』
























『帰りにマック寄んぞ。』




それって仲直りしてくれるって事だよね。ああ早く彼に会いたい!