冬休みも明けた一月。誰もが宿題をしていないとか、年も明けておめでとうと言い合う人だとかで溢れる学校。旅行以来の新羅たちとも話しつつ、またいつもどうりの日々の幕開けだ。
始業式をして、何日かは短縮授業で、また何日かすれば通常授業に戻ってくる。休み明けのせいか眠そうにする者もありながらも学校はいつもどうりだ。

ただ、あることを覗いては。










「え?呼び出し?」

シズちゃんが隣のクラスの女子に放課後の呼び出しをされたらしい。言わなくても分かる。告白されるんだろう。

(あー…苦しい)

シズちゃんはきっとオッケーするだろう。その呼び出した相手は凄い可愛かったし、そもそもシズちゃんの顔で恋人が居ないのはおかしい話。
俺は放課後にならないで欲しいと願うしかなくて、でも時間というのは残酷にも過ぎていく。

「静雄。行くんだろう?」
「ん?ああ、そーいやそうだったな」
「忘れるなんて酷くないか?帰ってきたら結果、聞かせてくれよ」

ああどうしよう。
もし、彼女と付き合えば俺なんか、構って貰えなくなる。俺なんか、要らなくなってしまう。それが怖い。

「し、シズちゃん!あ、あのさ…ちょっとだけ来て」
「あ?ちょ、臨也?」

彼女が出来る前に、俺が、奪えば良い。
…醜い感情だな。

「どうしたんだ?」
「す、好きなんだ、けど」
「…臨也?」
「俺、シズちゃんが好き。家族愛とかじゃなくて…恋愛として」

全く迷惑極まりない発言。これから彼女に告白されるというのに、俺が先に告白なんて。
ちょっとした期待。シズちゃんは俺を大切にしてくれるから…彼女なんか選ばないでいてくれる、なんて自意識過剰な感情。

「何言ってんだ?」
「ずっと好きだったんだ。初めて出会った時から。だから、その、」

――俺と付き合って。

そう口にしようとしたその時、シズちゃんはいつも俺に向ける笑みで頭を撫でてくれた。

「大丈夫だって。告白かどうかも分からないだろ?」
「で、も」
「俺は手前が大切だ。…恋愛感情としては見られねぇよ」

それって、フラレたのかな。
ああ、うん。
大切な存在…。
そっか、はは、そうだよね。

「ごめん…」
「なんで手前が謝るんだよ。じゃあ行くな、先帰るか?」
「あ…新羅たちと、待ってるよ」
「そっか。帰ったら宿題教えろよ」
「わかってるよ」

シズちゃんは、決して拒絶はしなくて、いつものように優しく接してくれた。こっぴどくフラレるよりはマシかもしれないが…俺の中はぽっかり空いたままで。

そして、シズちゃんが教室に帰って来たときに告げたのは、やはり、

「付き合うことにした」

うん、おめでとう。

「おめでとう。シズちゃん」
「ああ、ありがと」

その笑顔が、誰かのものになるなんて、許せないのに。
俺まで幸せになってしまっているのは何でだろう――

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