「えっと、君が容疑者の息子の折原臨也くんかな」

警察署にやって来た俺とシズちゃんは小さな個室に移動され、ドラマのような取り調べが始まった。

「…いえ、折原ではなく平和島です」
「?それはどういうことだい?」
「俺は折原と言う名前は捨てました。ですが四郎の息子だと言うことは認めます」
「…まあ良い。とりあえず、いくつかの質問に答えてくれるかな?」
「もちろんです」

シズちゃんは隣で少しソワソワしていたが、俺は決して引く事はせず真っ正面から警察官の人を見た。
今ここで決着をつけるために、俺はここに居る。

「君を逃がした、と言っていたがそれはどういうことかな」
「僕は、小さい頃から父親に溺愛されていました。父親は僕を愛して愛して止まなかったせいか、中学には行かせては貰えず、外にも出して頂けませんでした。それで母親は俺を家から逃してくれたんです」
「…なるほど」
「はじめに言いましたが、俺は折原ではありません。父親のこと…大変申し訳ありませんでした」

そのあと、父親との関係も明かして俺たちは帰ることになった。最後に父親に会って行くかと言われたが、俺は首を左右にふった。

「すいません。あの人は僕と無関係なんで」























翌朝、俺が話したことが報道されていたが何も動じずに朝食を食べ終えた。

『昨夜、四郎容疑者の息子が警察署に自ら赴き、全てを明かしたとの事です』
『四郎容疑者は酷く息子を愛していたらしく――』

俺の名は出して居ないから、誰も容疑者の息子が俺だとは気付かないとは思う。クルリ達は親戚に預けられることになったが、親戚たちは人殺しの娘など預かりたくは無いとほとんど拒否していたらしい。だが祖父と祖母は快く二人を受け入れたらしい。
二人も幸せに暮らして欲しい。だけど二人は…俺を恨み続けるだろうと思う。母親を殺したのは俺だと言っても過言では無いのだから。

「イザくん、何だか逞しくなったわねぇ!食欲も戻って来たみたいだし」
「お、お陰様で…」
「良いのよ!元気なのは良い事ですからね」
「ああ、そうだよ。だけど無理は禁物だからね」
「はいっ」

おじさまは手を合わせると食器を片付けて仕事へと向かった。幽くんは宿題があるのだと部屋に戻って行った。俺たちも宿題を済ませようと部屋に戻り久々の教科書を取り出す。宿題のプリントを広げて迫る始業式に備えることにした。

もう少しで冬休みは終わりだ。

「早かったなー」
「うん。そうだね…」
「あんま抱え込むなよ?」
「ありがとう。大丈夫だよ」

俺にはシズちゃんが居るんだから。
何も怖くない。

そう言い聞かせてプリントにペンを走らせた。

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