金閣寺も見た。五重塔も見た。それからおばさまのお土産も買って美味しい夕飯も食べて満足な旅行も終わりを告げた。明日には東京に帰るのだ。色々と会ったけど初めての旅行は楽しかった。

「また四人で来たいね」
「そうだな。すっげー楽しかった」
「あー帰るのが勿体無いよね」
「もう少し長居もしたかったな」
「だねぇ」

ベットに入りながら門田くんと新羅は楽しそうに話していたので俺もシズちゃんの方を見て笑ってみせた。

「色々とありがと」
「いや、こっちもありがとな。それより風邪薬は飲んだか?顔赤いぞ」
「え?あ、うん。大丈夫だよ」
「また風邪引かないようにな」

分かった、と頷くとシズちゃんは承諾したかのように毛布を被ったので俺も横になって目をつむった。暫く新羅と門田くんは喋って居たけど、少ししたら電気を消して辺りに静けさが包む。
本当に旅行は楽しかった。俺にとっては未知な世界だったけどそれでも優しく教えてくれたシズちゃんや新羅や門田くんには感謝だ。
皆の寝息が聞こえて来る頃には、俺も眠りについていた。















次の日の朝。俺たちはご飯を済ませると東京行きの切符を買って新幹線に乗り込んだ。行く時とは違って増えた荷物を片手に席に座ると、また長い旅が待っている。

「それにしても、本当に良かったね。臨也も旅行に行けてさ」
「だな」
「うん…ありがとう」
「良いって!何か暇だしゲームでもやる?あ、トランプあるよー」

さすがは用意周到。新羅は鞄からトランプを取り出して四人で東京に着くまでの長い時間をやり過ごした。



それから三時間過ぎる頃には東京につき、久々の池袋に何故か安堵する。

「今日はこのまま解散しよっか。今回は色々とありがとねー」
「臨也達も気をつけて帰れよ」
「うん、ありがとう」
「あんがとな」

二人に手を振ると俺たちは自分の家路へ歩きはじめた。

「楽しかったね」
「そーだな、また行こう」
「うんっ」

楽しかった。ともう一度言って俺たちはおばさまが待つ家へと帰って行った。

何日か離れていただけなのに、まるで里帰りでもしたかのような感覚で、見慣れたはずの街並みも酷く懐かしい。子供たちがワイワイ遊んでいる小さな公園を横切ると、ふと見覚えのある少女を見つけた。

「あ…」
「どうした?」
「いや、大丈夫。何でもないよ」
「そうか?」
「うん」

気づかぬフリをして公園を横切ろうとしたとき、遠くで「あー!」なんていう叫び声に思わず体が跳ねた。
ヤバい。

「イザ兄!今まで何処行ってたの!?」
「シズちゃん。走って」
「おい?」
「あ、イザ兄ってば!」

確かに声からしてマイルだ。
俺は少し重たい荷物を支えながらシズちゃんの家まで走った。まだ子供には大人の足の速さには適わないだろう。
なんだか悪いことをしたが致し方ない。

「イザ兄が居なくなったせいで――」

そう叫んだ妹に、思わず振り返ってしまった。足は止まりたくも無いのに止まってしまって…――

マイルが叫んだ言葉が石のように頭に落下して来た。
























「イザ兄が居なくなったせいで、ママは死んじゃったんだよ!!」

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