「本当に大丈夫?風邪が治ったばかりだから無理しちゃ駄目よ?ほらちゃんとマフラー結んで」

キャリーバックを手に俺とシズちゃんは玄関に立って居た。今日は先週行けなかった四人旅行だ。新羅や門田くんもいけるらしいので、やっと約束が果たされる気がした。
おばさまは、まだ風邪が治ったばかりの俺を心配してマフラーと手袋を買って来てくれた。ちなみにシズちゃんとは色違いだ。

「母さん、もう良いだろ。臨也もそんなガキじゃねぇんだし」
「そうだけど…本当に無理しない程度に楽しんでらっしゃいね?一応風邪薬持って」
「あ…はい」

錠剤の風邪薬を手渡すとおばさまはにこやかに「気をつけて行ってらっしゃい!」と言ってくれたので俺たちも笑顔で答えた。

「行ってきます」











「おはよーう」

朝の七時。俺たちはいけふくろうで待ち合わせをして居た二人と合流した。二人もコートを着ていて寒そうに手に息を吹き掛けていた。

「おはよう。んーじゃあ行こうか。新幹線の切符は買ってあるから、はい」

新羅は全くもって用意周到。
新幹線の切符を手に俺は少し浮かれていた。だって新幹線なんて生まれて始めて乗るんだもん。楽しみだな。

「臨也、風邪は大丈夫か?あまり無理するなよ」
「あ…うん、あ、りがとう」

門田くんはおばさまと似たような事を良いながら俺の肩を叩いた。


新幹線の中は俺と隣にシズちゃん。そして前の席に新羅と門田くんだ。やはり冬休みは皆何処かに行くのか、客も多かった。

「京都奈良行こう!」
「…思うんだけどよ、んなの中学に行っただろうが」
「何言ってるんだい。あんなの決められたルートを行っただけじゃないか。沖縄とかは高校で行くしね」
「同じもんだろ?」
「いや、でも食い物とか色々回れるじゃないか」

やはり。
いつもどうり会話に入っては行けなかったけど三人の話を聞くだけで良かった。人と接する事が無かったから余計に喋れない。でも三人が楽しそうならそれで良かった。

「着いたら何処行こうか?臨也は何処に行きたい?」
「何処でも…」
「まずはチェックアウトしとこうぜ」
「ああ、そうか。まずは泊まる場所探そうか」

わいわいと何時間もかけて、新幹線はいつの間にか京都に到着した。

「そうだ京都に行こう」
「新羅ほっといて行くか。臨也、はぐれんなよ」
「だ、大丈夫だよっ」
「あれ?何その華麗な無視」

初めてみる景色に俺は思わず感嘆した。三人は一度来た事があるから何も言わなかったが、俺にとっては初めての世界だ。凄い。空気も良いし何より晴れて良かった。

「臨也ー行くよー」

思わず立ち止まって見ていた俺に先を歩いていた新羅は声をかけたので慌てて走った。

「今は紅葉の季節だからね!なんだか凄い綺麗らしいし」
「まあ…確かに良いところだよな」
「空気も良いし」
「うんうん!やっぱり来て良かったよね。臨也は初めてだっけ?」
「う、うん」

中学なんて行かなかったから、もちろん修学旅行も行けなかった。仕方ないといつも片付けては居たが、何処か遠くに自由になりたかった。やっと念願は叶ったわけだが。

「じゃあホテルを探そうか」
「そうだな」
「ああ」

三人が歩き出したのを後ろから追おうとすると誰かに肩を叩かれた。

「臨也」
「え――?」

そこに立って居たのは、















「……父さ、ん?」

- ナノ -