あのまま家出するのも構わなかった。しかしおばさまに迷惑はかけれないと家に戻って来たらシズちゃんは先に帰っていてリビングに座って居た。

「イザくんお帰りなさい!ご飯出来たから座ってー」
「あ……すいません。今日は大丈夫です…」
「外で食べて来ちゃった?」
「あ、は、い。すいません…」
「良いのよ!」
「じゃあ先…失礼します」

どうしてもシズちゃんの傍に居たくは無かった。おばさまは不思議そうに見て居たが怪しまれないようにそそくさに部屋を後にした。

シズちゃんの部屋に戻ると、俺はタンスの中を漁った。もしかしたら部屋に戻ってくるかもしれない、と寝る分のスペースを開けて横たわる。これなら安心だ。

少ししたら風呂に入るのか部屋に戻って来たみたいだがシズちゃんは何も言って来なかった。完全に嫌いになったかな。

そしていつの間にか眠気が襲って来て、俺はそのまま眠りへと落ちた。


















「あぁらやだ!高熱じゃない!全く、なんでタンスの中になんて寝てたの!」

次に目を覚ましたら、俺はだるさと頭痛に襲われ、体温を計ったら見事に風邪を引いたらしい。シズちゃんのベットに寝かせられ、冷えピタをデコに貼って俺は朦朧とする頭の中を必死に耐えた。

「明日は学校お休みしなさいね。もしかしてご飯食べなかったのもそれかしら…とりあえず今日はこのまま寝なさい。明日また取り替えに来るから」
「迷惑、かけ…て、すいません」
「良いのよ。気にしないで、イザくんは早く風邪を治すことだけを気にしていなさい」
「はい…」

よし。と笑顔で頷いたおばさまは、おやすみなさい、と言ってから部屋を出て行った。もう五日後には終業式で冬休みになるのに俺は何してるんだか…。
これでもうシズちゃんと会わないのかな。風邪引いてる部屋なんか来たらうつっちゃうもんね。

(あー…早く治れば良いのに)

そしたら素直に、謝ることが出来たかもしれないのにな。





















みなさんこんばんは。
終業式も終わり冬休みがやって来ました。未だ俺の風邪は良くなりません。

……終業式も出れずに冬休みを迎えてしまったのは何だか味気ない感じがするが仕方ないだろう。ここは暫し耐えるのみ、だ。
どうやら旅行は明日行くのか、幽くんの部屋で寝ているシズちゃんが部屋にマスクをして服を取りに来た。何も言わずにただ無言で服を取り出して出て行った。
本当ならシズちゃんと行きたかったのにな。四人で旅行。
でも風邪引いてるし、引いてなくても行かなかった。このままの状況なら。またどうせ迷惑ばかりかけるんだろうし。

「……楽しんで来てね」

部屋を出ようとシズちゃんにそう言うと、何も返事を返さずに部屋が閉じられた。

(ははっ嫌われちゃった)

完璧にね。
このまま嫌われ続けるなら死にたい。
俺の存在価値はシズちゃんそのものなんだ。風邪で死んでも良い、ここから居なくなって死ぬのも有り。とりあえず死にたい。
シズちゃんに必要とされない自分など生きてる価値なんか無い。


……次の日には玄関からシズちゃんの「行ってくる」と言う声がした。
風邪はだいぶ治ったのか、昼過ぎ頃に体温を図ると六度まで下がっていた。だがまたぶり返してはいけないと、安静にして居たかったが、俺にはどうだって良いことだ。
死んだら何も無いんだから。

シズちゃんの部屋のベランダに出て下を見る。おばさまもさっき買い物に出かけたし幽くんも遊びに出かけた。また迷惑になるけどごめんね、と心に言い聞かせて俺はベランダから下に落ち――た、

「おい、何してんだよ。馬鹿」
「……何してるんだろうね」

飛び降りようとした俺の首根っこを掴むとさっき出て行ったはずのシズちゃんはそのままズルズルとベットに引きずる。

「シズちゃん、旅行じゃなかったの?」
「やっぱ手前ぇも行かねぇと面白くねぇからよ。帰って来た」
「……シズちゃんって馬鹿だね…あれだけ罵倒しちゃったのに」
「お互い様だろ」

いつもの優しい笑顔を浮かべるシズちゃんに思わず俺は泣いてしまった。
正直のところ嬉しかった。たぶんベランダから落ちても死なないだろうし、そしたら屋上にでも行って落ちようとか考えて居た。
だけどシズちゃんがこうやって止めに来てくれたことが嬉しくて嬉しくて…仕方なかった。

「シズちゃん。また来週にでも行こう」
「ああ」
「新羅たちが駄目でも、二人だけでも良いから行こう」
「ああ…」
「ありがとう。ごめんね」
「ばーか。お互い様だって言ってんだろ」
「やだな、シズちゃんに馬鹿とは言われたくないよ単細胞馬鹿」
「んだと!」

そして次の日。
シズちゃんが見事に風邪を引いたがたった二日で治してしまった。

俺も体力つけたいなあ

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