おばさまが学校の手続きを済ませてくれて、俺はシズちゃんと同じ高校の、来神学園へ入学する事が決まった。

「あら!似合うじゃない!」
「ああ。似合う似合う」

そう誉めてくれているのは、初恋の人とその母親で。俺は今、来神学園の制服を着ているところだった。

「少し大きいけど、男の子なんだからすぐ伸びるでしょ」
「そ、うですかね…」
「そうよ!あー二人分のお弁当を作るのが楽しみだわあ!」

そこは楽しむところなのだろうか…。二人分なんて面倒なだけじゃ…。

「何だか色々とすいません…」
「遠慮なんかしないで!イザくんはもうウチの家族なんだから!…あらやだ。臨也くんって言った方が良いわね」
「いいえ。おばさまにそう言われると嬉しいのでイザくんって呼んでください」

おばさまに名前を呼ばれると、本当の母親から名前を呼ばれるような気がして凄く幸せなのだ。それは本当の俺の母親に失礼な気はするが本当だから仕方ない。

「さて。明日学校に行くんだから二人とも早く寝ちゃいなさいっ」
「おー、おやすみ」
「おやすみなさい」
「ええ。おやすみ」

部屋に着くと制服を脱いでハンガーにかけパジャマに着替える。

「…本当に入学して良いのかな」
「ん?」
「シズちゃん迷惑じゃない?その…家にまで押し掛けて、学校まで一緒だなんて…」

本当のところ、いきなり家にやって来た奴が同じ部屋にして同じ学校に行くのは迷惑なんじゃ無いかと思った。
極力は、彼の嫌がる事はしたくない。
シズちゃんに、嫌われたくはない。

「お前、小学から変わったよなー。別に気にしてねぇよ。迷惑だなんて一切思ってねぇから安心しろ」
「本当…?」
「信じろって。まあ…有難い事に勉強とか教えて貰えるしな」
「あの勉強机を買ったおばさまが可哀想だよ…使って無いでしょ?」
「使ってる!…たまに」
「たまにじゃん」

シズちゃんとのこうした言い合いも、あの日出会わなければ出来なかったこと。もし、あの日、家出をしようとしなかったらシズちゃんには一生会えないままだった。

だからあの巡り合いに感謝して、俺は今日も愛しい人に抱かれながら眠るんだ。

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