さよなら池袋



「ははっ、なに、さっきの気にしてんの?やだなァシズちゃんらしく無いじゃん。ただの人間らしい君なんて気持ち悪い」

良く自分でもこんなに言葉が出るもんだと思う。
たった今、俺は見事にシズちゃんにフラれたとこだった。いつもなら「手前ぇなんか好きじゃねえ!」とか罵るのかと思えば、彼はただ素直に「悪い」と断ったのだ。

ああ きもち わる

「気持ち、悪い」
「臨也」
「……名前…呼ぶなよ…」
「臨也…」

それ以上、名前なんか呼ばないでよ。
少しでも期待しちゃうじゃん。これ以上、俺のこの気持ちを揺さぶらないで。

「臨也、あのよ…」
「良い…もう良いから。何も言うな。……今日は変なシズちゃん。顔が間抜けだよ」
「……臨也」

何度も何度も、その唇で俺を罵って来たはずなのに。今では少し強ばった声しか発せられてない。

さて、そろそろ俺も限界だ。
喉が乾いて「じゃあ」と告げた声は掠れてみっともない。

「俺は帰るよ。今日は喧嘩せずに済みそうだしね」
「……」
「……ばいばい」

歩き出す。

決して振り向く事はせずに。

追って来ないのはもう俺の事がどうだって良いから?
分かってたはずなのに、どうして告白なんかしたんだろ。
どうしてあんな単細胞馬鹿を、

好きになっちゃったんだろう。



(ああ。)




さよなら池袋。



(そして、)














さよなら俺の初恋。


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