何十年ぶりの外は、俺が前に見たよりも大きく変わって居た。
前は駄菓子屋だった場所も、今では潰れて駐車場になっている。近くにある時計を見たらもう夜の11時だ。こんな夜に家に行ったら迷惑では無いだろうかと、近くの公園に入りベンチに座る。さすがにもう寒くて手が凍える。だが今日はここで少し寝て朝になったらシズちゃんの家に行こう。と頭で計画を練りながら目を閉じる。

だがそれは、愛しい声に遮られて。

「臨也!」

目を開けて見ると、ラフな恰好をしたシズちゃんが息を切らしながら目の前に立って居た。こんな時間に何でシズちゃんが…。

「どうしてここに…」
「おばさんから電話来てから一時間も過ぎてんのにお前がウチに来ないから心配して探しに来たんだ」

ははっ。シズちゃんは相変わらず優しいんだから。
思わず涙ぐむと、「ウチに帰ろう」と手を差し出して来たその大きな手を、

俺は離さないように強く握った。
















「お帰りなさい。あぁやだ。顔に傷出来てる!治療の前にまず手洗いしてきちゃいなさい!ほら静雄もっ」

一軒家に着き、中にお邪魔するとおばさまが立っていてホッとしたような顔をしてから俺たちを洗面所に向かわせた。
手洗いうがいを済ませると大きなリビングに付く。そこでおばさまが救急箱を取り出して来た。軽く治療してから、俺は椅子に座り、隣にはシズちゃん。そして目の前にはシズちゃんの両親が座る。

「あの…急にお邪魔して、すいません」
「良いのよ良いのよ!家族が増えるなんて嬉しい事じゃない!」
「か、家族…?」
「そう!もう臨也くんは平和島家の家族!遠慮なんかしなくて良いからね」
「ここを自分の家だと思って過ごしてくれて構わないよ。逆その方が嬉しいしね」

暖かい。
はじめて、こんな暖かい家族に包まれただろう。

「部屋が空きが無くて、悪いんだけども静雄と一緒でも大丈夫かしら?」
「あ、はい。大丈夫です」
「助かるわあ!じゃあ冷えちゃう前に二人でお風呂入っちゃいなさい。明日、弟の幽も紹介するわね」
「解りました」

じゃあ部屋行くか。とまずシズちゃんの部屋に案内された。中に入ると本当に普通の感じで、ベットに小さなテーブル。タンスと勉強しないであろう勉強机があり、その机には鞄が置いてあった。
近くにキャリーバックを置いてから中を開けると、本当に必要な物全てが用意されて居た。衣類や下着、そして何より封筒には二十万以上は入っており紙には「これで静雄くんと同じ学校に入れて貰いなさい。臨也の母親として何もしてやれなかったけど、元気で居てください」と添えてあった。

「母さん…」

ありがとう。

ありがとう。

嫌われてたんだと思っていたけど、少しは俺を愛してくれたんだって思って良いよね?

ありがとう。

「優しい母親だな…。気を取り直して風呂入ろうぜ」
「うん…。シズちゃんもありがとう」
「いや、俺はお前と暮らせて嬉しい。遠慮せずに言えよ」
「うんっ」

きっとシズちゃんの優しさは両親譲りなのかな。

風呂場に向かう途中、リビングでは楽しそうな声がして、何だか俺まで嬉しくなってしまった。

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