いつからだっただろう。父親がこんなにも俺を溺愛し始めたのは。
朝出勤して帰って来て、何事も無いように家族でご飯を食べて…リビングでまったりして。両親と妹におやすみと言ってから。父親は俺の部屋に来て馬乗りになりつつキスをしてくる。ねちっこいキスは好きじゃなかったけど、唇を食べる勢いで角度を変えてしてくるからたまったもんじゃない。
そんな日々が続いて、母親もこの現状を気付いているのに見てみぬフリをしているし、俺もいい加減に高校生だ。だが中学は行っては居ないから今更高校に入れるかどうか。
中学に行かなかったのは父親のせい。小学校のときに喧嘩ばっかしてたけど、凄く凄く大好きだった男の子が居た。家に呼んだりして家族にその人と同じ中学だから楽しみだ。と言ったりもした。でも…父親はそれを許せなかったらしい。中学には行かせない。と言って結局は行けず仕舞いになり、小学校の卒業式以降は会っていない。行って居ない間は暇だ。携帯も持っちゃ駄目、パソコンも持っちゃ駄目。外で繋がるものは全て断ち切られた。

「……母さん」
「…いざ、や」

お昼時。今は父親は仕事で居ないし妹たちも学校で居ない。それを見計らって俺は母親の元に来た。だが…。

「来るんじゃないわよ!もうアンタなんか私の子供じゃない…!」
「……ごめん、なさい」

今日も同じようにあしらわれただけだ。
母親はもう、父親とあんな仲になっているのを見てから俺を避けるようになった。
母親にだけは信じて貰いたかった。
この状況を救ってくれるのは…母親しか居ないと思ったからだ。

「でも母さん、俺は外に出たい」
「だから…駄目だって何度も言っているでしょう!いつになったら覚えるのよこの粕が!」

母親は俺に暴力をふれない。それもそうだ、あの父親に見つかりでもすれば被害は自分に来るのだと分かって居るから。家に出したら自分が被害に遭うのも分かっているから。
結局は、自分一番ってやつ。

「…もう良いでしょう。早く部屋に戻りなさい」
「…ごめんなさい」

母親を苦しめて居るのは俺。
全てこの家を狂わせて居るのは俺。
いっそ死んでしまえば良いのに。

「……会いたい、な」

小学校のときにずっと遊んだあの子に。小学三年で出会ってから卒業するまで、ずっとずっと一緒に遊んで居た。六年になると喧嘩ばっかりもしたし、それでも俺にとっては遠い遠い…初恋の人だった。
何も言わずに連絡を断ち切られたから、裏切られたとか思ったかな?ごめんね。

(会いたいなあ)

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