一体誰だろうと思いつつもモニター付き電話を取ると写し出されたのは新羅とセルティを先頭にした友人たちだった。 『やあ臨也。もう産まれそうみたいだったから皆を呼んで見たんだけど。お祝いがてらどうだい?』 「旦那さんなら留守だよ」 『知ってるよ。とりあえず寒いから開けてくれないかな』 その友人の中には先ほど会った門田や、先ほどチャットで話した帝人達まで居る。これは完璧隠せなくなったな…と思いつつ玄関を開けると新羅とセルティ以外、驚愕した声をあげる。 「で…シズちゃんが留守だってどーして知ってんの?ついでに上司まで何で居るの」 さっき静雄を呼び出した本人が何故此処に居るか何てなんとなくは分かるのだが。 「静雄ならもうすぐ来るよ。上がって良いかい?」 「そういうつもりで来たんだろ」 「話が早くて助かるよ」 臨也と静雄のこのマンションは、二人が結婚した時に住んでいてなかなかと部屋は広い。 前の新宿の家より広くは無いが、そこそこ何人かは入る。 後ろからぞろぞろ入って行くのを感じながらリビングにつくとある事に気付く。ソファーの上にあるたくさんの手提げ。先ほどチャットをしていた田中太郎こと竜ヶ峰帝人と罪歌こと園原杏里は自分がネットで話して居た奥さんだと気付いたのだろう、驚いた顔をしている。セルティは初めから静雄の妻が臨也だと知っているので驚きはして居ないようだったが。 「ふーん。もう準備万端みたいだね」 「ち、ちがっ!…こ、れは別に……」 「ああ!あんまり動かないで。転んだりしたらどうするんだい」 慌てて臨也を支える新羅に周りから歓声があったがどうだって良い。 適当にソファーの上にある手提げを臨也と新羅、門田とセルティでどかして居るとガチャとドアが開かれた。 「お。旦那さん登場かい」 その言い方やめてよ…と思いつつ誰もがリビングのドアを見つめると軽く濡れた様子の静雄に何故か周りが拍手した。 「なんだあ?」 「おかえり静雄。待ってたよ」 『ご苦労だったな』 「あれトムさんまで」 「い、いや…悪かったな…」 何となく意図がつかめた様子だったがいつも見たくキレる事はせずにソファーに座る臨也に近寄った。 「ただいま」 「……ん」 「茶淹れるか」 「…俺がするから良いよ。座ってて」 「お前一人じゃ危ねぇだろ」 「そんなに失敗しそうな奴に見える?」 「めんどくせーから二人で淹れるか」 「何それ、意味わかんない!」 その方が面倒になるじゃん。と軽く愚痴を溢しながらも重たいお腹を支えながら静雄と二人でキッチンに向かう。 そんな二人を見つめながら新羅はセルティに「幸せそうだね」と笑いかけていて、狩沢は「やっぱりイザイザだったんじゃーん!」とはしゃいでいる。 「えと…おめでとうございます」 「おめでとうございます」 「おめでとう、ございます」 「ああ。うん、ありがと」 来良組からのお祝いの言葉に素直に礼をしながら茶を渡す。 「まさかお前だったとはな…」 「ドタチンには悪い事したね」 「今更だけどな」 「そうかなあ?」 ニヤニヤしながら茶を渡す臨也に、門田はため息を吐きながら「頑張れよ」と言葉を送った。 「さて。お祝いしに来たんだ、色々と持って来たんだよー。はい、僕とセルティからは子供服だよ。もういっぱい買ってるみたいだけど…本当なら俺とセルティの子供にふごごご」 『とりあえず貰ってくれ』 「ん、ありがとう」 黒い靄のようなもので新羅の口を塞ぎながら紙袋を渡される。中は少し可愛らしい感じの服がたくさん入って居る。 「俺料理ってことで」 「がんばりますね…」 「ぼ、僕も手伝うから」 「じゃあキッチン借りまーす」 スタスタとキッチンに向かう三人。正臣は遠慮無く冷蔵庫の中を漁り始めたが臨也は気にする事無く門田達を向いた。 「俺たちからはこれだ」 「あぁ。瓶とか洗うバケツかな」 「そうだ。ついでに洗剤も」 「ふふ、ありがとう」 「こう見るとドタチンって、お父さんみたーいっ」 「門田さんならお似合いっすよ!」 「嬉しくねぇな…」 青い透明のバケツの中に、瓶や赤ちゃんが使う皿などを落とす洗剤が入っていて、微笑ましい気持ちで眺める。 「お前、表情が可愛くなったよな」 「え?」 「可愛くなったつーか、優しくなった…つーか」 「ドタチンー。イザイザ口説いてもシズちゃんが居るから無理だよー」 「そんなんじゃない…」 門田達の騒ぎをいつも見たく見つめてから隣を見ると、田中トムから静雄もお祝い品を貰ったらしい。頭をペコペコ下げて「ありがとうございます」なんて言っている。 一時間ぐらい喋りつつ、飲んでいると料理が出来たのかテーブルに数々の料理が運ばれて来た。どれもこれもが美味しそうで誰もが歓声をあげた。 そして大人たちはシャンパンを、未成年と臨也は偽シャンパンを手に乾杯をした。 |