互いに最も嫌な事をしよう。と言ってはじまったのが恋人ごっこだ。互いを好き合うなんて気持ち悪いだろう?このゲームは簡単。どっちが本当に好きになってしまうかまでの簡単なゲームだ。

「どう?惚れた?」
「んなわけねぇだろ」
「素直じゃないね」

彼の部屋にいつも見たく上がり込んでキスをして、ベットに寝転がる。
シズちゃんは細い手で一本のタバコを掴むとそれをいつも死ねだの言う唇に持っていかれる。カチ、カチ、と数回ライターを付けてタバコに火をつける。そして大きく吸い込んでから小さく開いた唇から煙が立ち込めた。
そんな仕草をベットから見つめて居ると、ほんの少しだけ、カッコイイと思ってしまった。シズちゃんは黙ってれば本当にイケメンなんだけどね。

「今日、泊まって良い?」
「勝手にしろ」
「じゃあ勝手にする」

彼との会話は殆ど無い。恋人ごっこを初めてから、彼の暴力や怒り、殺気などは全てが封印されたように短い言葉として現れる。そのせいでいつも会話が途切れて話すこともあんまり無い。
俺が一方的に喋ると不機嫌そうな顔をして黙れ、と一喝するので殆どが無言だ。
これじゃあ君を惚れさせられ無いじゃないか。

「いい加減に俺に惚れてみなよ」
「ふざけんな」
「そしたらこのゲームはお仕舞いだよ。まあ君の負けになるわけだけど」
「……」

見向きもせずに黙々とタバコを吸う彼に、なんだか腹立たしくて無理矢理こちらに顔を向かせると強引にキスをした。口内を蹂躙したりされたりすると、息も段々上がってくる。やっと離れた唇の間には銀の糸が引かれた。

「んだよ。タバコに嫉妬か」
「そんなわけないじゃん」
「手前こそ、俺に惚れてんじゃねぇの?」

そんな彼の問いかけに思わず小さく呟いた。

「…かもね」

恋人ごっこを進めたのは俺から。そして彼も承諾をしてはじまったこのゲーム。
終わりなんて初めから見えていた。
いうなら、某ゲームでレベルが99で、ゲームをはじめた時から目の前がラスボスとかね。そんな感じ。終わりなんて初めから見え透いていた。
君ももう気付いてんでしょ?

「ねえシズちゃん」
「んだよ」
「いっその事さ、恋人ごっこやめて…本当の恋人にならない?」

そう覚悟して言った俺の言葉に、彼は驚愕した顔をしてこちらを見た。
このゲームに勝ち負けをつけるとしたら引き分けだ。ね?そうだろ?

「まあ…それも良いか」

だって、このゲームを始めた時から俺たちは互いに惹かれ合ってたんだから。


恋人ごっこ
(まあ…結果オーライって事で)