ごめんね。と言いたげな顔をした臨也は何も言わずに手を繋いで来た。 暗くなった夜道。 自転車をカラカラと押す音と、その自転車には俺と臨也の鞄が入ってる。 「……」 「…ごめん」 「……」 「…帰る?」 「いや、」 臨也は学校から出た途端、「帰りたくない」と俯いた。だったら帰るなよ、とそのまま放置してやりたかったが、コイツは弱々そうにブレザーを掴み、小さく「俺とどっか行こう」と泣き出しそうになりがら言った。 それに俺は、断る事は出来なかった。 まあ簡単に言うと家出だ。さっき携帯に両親と幽から電話があったがあまりにもうるさかったので電源を切った。 「…何処に行きたい?」 「何処でも」 「…うん。俺も。君と二人になれるなら何処でも良い」 ぎゅ、と強く握られる手を見つめながらだいぶ学校から遠くに来たのだと空を眺める。 ああ、何処に行くか。 もう何処だって良い。 「母さん達…心配してるかな」 「だろうな」 「シズちゃんは本当に良いの?」 「うっせぇな。良いつったら良い」 このまま死んだって構わねぇ。コイツとなら。 「…あ。」 急に臨也は立ち止まり前を見た。俺もそっちを見ると新羅と門田がこちらに向かって走って来ている。 「どうしよう…」 「…後ろ乗れ」 「え?」 「早く乗れ!」 自転車に股がると、すかさず臨也を後ろに座らせて、来た道を戻るようにして自転車を漕ぎ出した。 遠くで新羅と門田の怒鳴り声とかが聞こえたが無視だ。とりあえず池袋から離れるしか無いな。 「…怒ってたね」 「そりゃあな」 「…ありがとう」 「……池袋から離れるぞ」 「うん」 強くペダルを踏んで駆け出す。 時計台を見たらもう日付も変わっていて、後ろで臨也は俺の腹に腕を回し、ピタリと背にくっついてから静かになった。 からから、 自転車は夜道をかける。 からから、 二人分を乗せて。 そうして朝日がやって来た頃。学校や俺たちの家では、居なくなったのだと大騒ぎになって居た事は俺たちは知らない。 逃避行 (自転車は止まらずに駆け続ける) (二人になれる場所まで) |