自問



何故生きるのか。
生きてく必要は、何が源なのか。
人の生命というものは、どうしてこうも息をしたがるのか。
何故人は。
傷つくのを知って他人に触れるのだろうか。
何故人は。
感情を知って愛をしるのか。
何故人は。
こんなにも脆いものなのか。

「俺をころしてくれ」

この折れた羽を、戻すのはいない。




暫くは、男と臨也は楽しそうに話していて、静雄は二人から背を向けていた。
駆け上がる感情に苛立ちを覚えた。
自分が、殺し屋だと臨也は気付いてしまった。もう彼の前に居ることは叶わない。思い返せば、あの友だった時間は、幸せ過ぎたのかもしれない。

「……」

静雄がやって来たのは依頼を頼んだ事務所。ドアを開け、中に居たヤクザ達に手を広げた。

「俺は、任務を失敗した。だから」

これが最善。きっと、互いに。

「俺をころしてくれ」

ヤクザ達は事情はともあれ、彼が失敗したことは許されないこと。殺し屋でもあるはずの彼が、任務を果たせず帰還など許されやしない。
男たちは、それぞれナイフなどを取り出した。
臨也と居た時間。彼が笑っていられる場所が出来た。それでまあ良い。良いのだ。血しぶきが上がるのを、曖昧な意識の中で見つめていた。








男は、もう大丈夫だと家へ帰って行った。そんな彼を臨也は見送りながら辺りを見たが、静雄の姿は無かった。
それから学校へ行くにも静雄は来ては居ない。自分と合わす顔が無いのだろうか。彼が殺し屋だと知ったのは、ヤクザずてに。凄腕の殺し屋が、『平和島』という男だったと。そしてそれを知って、自分に近付いた理由を知ったら胸が張り詰められそうだった。

「平和島先輩、ここ何日も来てないよね」
「どうしたんだろう?」
「なんか具合悪いのかなー」

そんな噂を耳で受け流しつつ、あの音楽室へ行く。この場所からはもう、彼の姿をみることは叶わない。
何処へ行ってしまったのか。
知り合いに聞いてみようと携帯を取り出すと、ちょうど携帯から着信。四木からだ。

「どうしたんですか?」
『いやね、さっき聞いた情報なんですが…』
「はい」
『平和島静雄が、重傷で病院に居るそうです』
「…え、」

静雄が重傷で病院。
いったい、どうしてだと四木に詳細を頼む。

どうやら、依頼に失敗したからヤクザたちに殺されかけたと言われたが、その前に静雄自ら『依頼に失敗した』『俺を殺してくれ』と頼んだという。

「な…ん、で」
『意識も、戻るか分からないそうだ』
「その病院、教えてくださいっ」
『行くんですか?あなたを、殺そうとした相手ですよ』
「それでも」

あの時間にもう一度戻れるなら。一緒に居る幸せを感じられたあの時間に。

「俺は彼に、まだ何も伝えてない」







沢山の人を殺めてきた。
殺められたのは、自分に感情だと思うものが無かったから。
何故、と繰り返す毎日。
人が息をするのは何故。
人が人を愛するのは何故。
罪を重ね過ぎた自分への罰は、その答えを見つけ出せないこと。
人という生き物に生まれて、良かったと思うことは無かった。無かったのに。

「…あいつだけは、特別だった」


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