無自覚りんご
※短い
おーい、
遠くで友人が俺を呼ぶ声がする。分かった分かった、と片手をあげて少し遠くにいるシズちゃんに鞄を投げつけた。
これから担任に呼び出しだ。
先帰る?
俺にしては可愛い上目遣いで言ってやれば知らん顔をしたまま、首を左右にふる。
いや、待ってる。
何時終わるかわかんないよ。と付け足しても彼は俺の鞄も奪い取ると少し微笑んで背中を向いた。
手前ぇと帰りてぇから待ってる。
後ろ向いても分かる。ああ顔真っ赤。
無自覚にそんな事言って、林檎みたいに耳まで真っ赤にさせて。
なんだ、シズちゃんって可愛い。
ほらさっさと行けよ。
うん。待っててね、
だから待ってる。
……早く帰って来いよ。
もう馬鹿みたい。
天敵なはずの彼とこんな愛らしい会話してるなんて。
去って行った俺はふと気付いた。
もうやだ、
俺まで顔真っ赤だ。
これじゃあまるで、シズちゃんが大好きみたいじゃん。
(無自覚りんご)