片羽

朱い花びらが舞う。
なにが起きたのか対処出来ない脳が、ひたすら叫んだ。
ああ、嗚呼、アア!

「ああああああああああ!?」

これが神からの報いだというならば、俺は全力でその神を否定しよう。ああ、世界は残酷故、愚かしい。

その日、俺は片腕を無くした。






誰かは嘲笑うように。誰かは貶すように。誰かは喜ぶように。生き物はそれぞれの仮面に描かれた感情を見せた。

「折原の奴、とうとう天罰が…」
「ざまぁみやがれ!」
「ふははははだっさいなアレ!」

言いたい放題の口。塞いでやりたいのに、その術が無いのが悔しい。
片腕を無くした俺に、周りは嬉しそうにしながら貶してきた。知らない男に、斧を振り下ろされて片腕が無くなった。

「臨也」

その、第一発見者である彼、

「シズちゃん」

いつだって周りを警戒していた。なのに、大好きな彼の傍に居て気を抜いていた。それが仇となったのだ。
彼はそれを自分のせいだと嘆いた。どんなに「君は悪くない」と言っても、ただ首を緩く左右に振るだけ。

「行きてぇとこはあるか?」
「君の好きなところで良いよ」
「適当にブラブラするか」
「うん」

ゆっくりと、腕がある右手に、シズちゃんの大きな指先が絡まる。周りは貶した。口々にこぼす本音。周りがどんなに俺たちを批判しようが構わなかった。俺たちが幸せなら。二人で息をしていられるなら。なんだって。

「シズちゃん」
「なんだ?」
「ごめん…ごめん、俺のせいで。俺がちゃんとしてれば、君をこんな事に巻き込まなかった」

俺の傍に居るが故、俺とこうして付き合ってるが故、彼も同様に周りから貶され否定される存在になった。結果、すべての発端の糸は俺にある。
なのに彼は、公共の場でありながらも頬にキスをすると優しい笑みを浮かべた。

「何言ってんだよ、俺は手前ぇと居たいから居るんだ」
「でも、」
「好きだ。ずっと好きだ」

だから傍に居る。
暖かくて、人肌のような温もりのある言葉に、俺まで笑みをこぼした。

「ぜってぇ守ってやるから。ずっと、ずっとな」
「ああ…君はまるでヒーローだね」

そして俺は片羽を無くした、どっかの国のお姫様と言うとこか。飛びたくても飛べない、巣から落ちた雛のようだ。じゃあシズちゃんは、ヒーローという名の親代わりかな?

「親代わりは違うか」
「いきなり何だよ」
「いや?ねえ、あっちの広場に行ってみようよ」
「ああ」

きつく握られた手のひら。
離さないでくれよ。俺はまだ、覚束ない足取りで踊る雛なのだから。


 片 羽



た、大変お待たせ致しました…!!片腕を無くした臨也のお話でしたが、如何でしたでしょうか?お待たせした挙げ句に、こんな拙い文で申し訳ないです…返品可能ですのでっ
素敵なリクエスト、ありがとうございました。

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