来神学園には、今大人気のアイドルの折原臨美がいる。良く似合う黒髪に、赤い瞳。一言でまとめれば美少女だ。
彼女は雑誌やテレビの引っ張りだこで、あまり学校にもこられないが、来たら来たで男子や女子のファンが彼女の周りを囲んでいて、恋人である静雄は近付くことは出来ない。

「君の彼女も大変だねえ」
「……」

静雄の数少ない友人である新羅は、困ったように肩をすくめた。
暫く見ないうちに恋人は益々綺麗になり、そして自分との距離も益々離れていくばかりだ。静雄は決意をし、授業が始まるチャイムが鳴り彼女の周りから人が居なくなったのを見計らい、彼女の耳元で「昼休み、屋上で待ってる」と囁いて席についた。
臨美は少し驚きながらも小さく頷いた。








昼休みの屋上。立ち入り禁止だというのに静雄は平然と屋上のドアを壊して臨美を待っていた。
まだ彼女が芸能界という世界に入る前、ここで静雄は臨美に告白をした。口喧嘩は日常茶飯事だった二人だったがいつしか、その怒りは恋へと変わっていた。そしてスカウトされて芸能界入りしてからは、雑誌に引っ張りだこで会う機会も、電話する時間さえ無くなってしまった。

(もう音信不通から二ヶ月…か)

最後の電話は確か、「仕事が忙しいから暫く会えない」とのことだった気がする。彼女はこれからどんどん忙しくなる。この関係を続けていては彼女側にも迷惑がかかるに違いない。

「…シズちゃん?」
「ん?ああ、久しぶりだな」
「…そうだね」

臨美は小さく笑いながら壊れたドアを押しながら静雄の前にやってきた。

「もうさー、他の奴ら振り切るの、大変だったんだから。シズちゃんが追っ払ってくれたって良かったのにー」
「悪いな」
「……なんか、今日のシズちゃん変」

いつもならつっかかる場面なのに静雄は冷静に返事を返した。臨美は静雄を下から覗くように見つめて来たのに小さく微笑んだ。

「臨美」
「え、なに…?」
「もう別れねぇか」
「……は?」

静雄が何を言ったのか分からなかったのか臨美は思わず、聞き返してしまった。

「何、言ってんの…」
「手前だって、毎日俺になんか構ってらんねぇだろ。それに週刊誌とかうざそうだし」

人気アイドルに恋人が居ると知られればパパラッチが殺到するに決まっていて、それで彼女の迷惑になりかねない。
静雄はそれだけは避けたかったし、もう臨美には自分が居なくても大丈夫だろうとも思っていた。

「何、飽きたの?」
「ちげーよ。お前に迷惑がかかるし、多忙の合間縫って会うのも嫌だろ」
「そんなの…」
「それに、手前…俺が居なくても良いだろ」

その言葉を聞いた瞬間、臨美の愛らしい瞳から滝のように涙がこぼれ落ちた。せっかくのメイクも涙でぐしゃぐしゃだ。

「なっ…臨美?」
「ば、馬鹿!!シズちゃんの馬鹿!単細胞!これだから単細胞馬鹿は嫌なんだよ!」
「はあ?つか馬鹿ばか言うなっ」

ボロボロと涙を流しながら臨美は静雄の大きな胸へと飛び込んだ。

「私、がっ…どんだけ寂しかったと思って、ん、の…!毎日、シズちゃんの事、ばっかで…今日だって、会えるの、楽しみにしてたのにっ」
「わ、悪…」
「写真撮られてる時も、テレビで、話してる時も、メイクしてる、時も、休憩の時も、バスの移動の時も、いつだって、


頭の中は君でいっぱいなの。」


どこか歌詞にでもありそうな台詞に、思わず静雄も泣きそうになってしまった。

臨美は多忙。写真やらテレビ出演やら。でもその全ての時間が静雄への時間。「今何してるかな」とか「今度会ったら美味しいプリンあげよう」とか、乙女らしい考えで会えない気持ちを毎日、携帯の画像の彼へ馳せるのだ。

「悪い…そこまで考えてくれてたなんてよ…もしかしたら俺のが飽きたのかと…」
「んなわけないでしょ!私にはシズちゃんしか居ないんだから…っ」

すすり泣く声を聞きながら、か細い身体をゆっくりと抱き締めた。

「なあ。臨美」
「なぁに…」
「これからもずっと、手前ぇの頭ん中、俺でいっぱいにしとけ」
「シズちゃんも…その小さい脳みその中、私でいっぱいにしてよ」
「ははっ、既にいっぱいだっつーの」

そうして二人は久々のキスに溺れた。









『ごっめーん!私とシズちゃんが二人で手ぇ繋いでんの週刊誌に乗せられちゃったー。と、いうわけで、頑張ってね!あ。別に付き合ってるって言っていいよー』
「臨美…次会ったら殺す!」

次の日から静雄はパパラッチに追われる毎日を送り、時が過ぎ、大人になった二人は結婚したと週刊誌やテレビで報道されたとか。

(ま。幸せなら良いんじゃない?さーてセルティの為にご飯買いにいこーっと)

追いかけられる友人を遠目に、新羅は静かに愛する家に歩き出した。
























遅くなりました…!
女体化のアイドルパロですが…砂糖とチョコレートを混ぜ合わせたぐらいにゲロ甘い話ですいません。むしろバカップルですねこいつら(笑)





(恋と仕事は全て別物でお願いします)
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