お昼寝の時間の前は、幼稚園の庭で子供が無邪気に笑いながら駆け回る時間。女の子も外で元気良く遊んでいて、静雄も砂場で遊ぼうと友達に誘われたのでさくらんぼ組から外に駆け出した。だが、隣のりんご組の中に一人の少年が外を見たままお絵かきをしていた。遊ぶ相手が居ないのだろうか?と優しい静雄はその少年に声をかけた。

「あそばないのか?」
「……うん」
「おひるね、できないぞ」
「……いいよ。べつに」
「ふーん」

変な奴、と思いながら静雄は少年から背を向けて砂場に駆け出す。彼の周りには友達は沢山居た。だからこそ少年の気持ちなど分かりはしなかったのだ。遊びたいのに遊べないもどかしさを。




散々と遊んだ子供達は、布団の中に入ると目を閉じた。疲れてすぐに寝につく子が多かったし静雄もすぐに寝付く方だった。しかし今日はどうにも寝れなかった。寝返りを繰り返しながら何とか眠ろうとしたが寝れない。そこで仕方なく布団から起き上がり、他の子を起こさないように、さくらんぼ組から出ると先ほどの少年が砂場に居た。

「なにしてるんだ?ひるねのじかんだろ」
「そういうシズちゃんはどうなの?」
「シズちゃん?」
「きみのなまえ。しずおだからシズちゃん」
「まあなんでもいいけど」

自分の胸にあるさくらんぼの形をした名札には「へいわじましずお」と書かれていて、少年はニコニコしながら静雄を親しみを込めて名前で呼んだ。静雄も彼の名札をみると「おりはらいざや」と書かれていた。

「へんななまえだな」
「よくいわれるよ」
「いざやはなにしてんだ?」
「すなでおしろつくってる」
「じゃあおれもてつだう」

地面にしゃがむと、まだ土台さえ作ってないお城を二人で完成をさせて行った。水を砂に含ませると固まるので、それを利用して壁などを作り、そして夢中になっていると先生が二人を呼びに来た。

「しずおくん!お昼寝してないでどうしたのかと思えば…」
「いざやとしろ、つくってた」
「……折原くん。デザート居る?」
「……いらない」
「そっ、そうよね!要らないわよね!」
「なんだいざや。でざあと、たべないのかうまいのに」
「…あんま、しょくよくないから」

それが嘘だと言うのは子供ながら静雄には分かって居た。もしかして誰かに苛められているのだろうか、と幼いなりに考えた結果…。

「よし!おれのはんぶんやる!」
「い、いらないよっ!」
「そうよ静雄くん。折原くんに無理して食べさせたりしたらお腹痛くしちゃうかもしれないでしょう?」
「でも、はらがへるよりかはましだろ?」
「いいんだシズちゃん。ありがとう…すごくうれしいよ」

何故、先生たちが臨也にデザートを食べさせないのかは分からなかったが、お昼寝前でも先生は臨也が一人なのに声をかけたりはしなかった。自分が一人だと「大丈夫?仲間外れにされたのかな?」など優しい言葉をかけるのだが、臨也に対しては反対だ。

「なあ、いざや。せんせーたちにいじめられてるのか?」
「っっ!!ちが、ちがう」

明らかにそうらしい発言に静雄はムッとした。誰に、と言えば臨也にではなく先生たちにだ。

「おれ、せんせーたちなぐる」
「ちがうんだシズちゃん!せんせーたち…おれの、あかめがきらいで……」
「あかめ?」

そういえば、静雄は気にはしなかったが臨也の目は血のように真っ赤だった。絵本とかにも赤目は不吉だと書いてあった気がしたが…静雄にはどうでも良かった。

「なんだ。きれいじゃねぇか」
「え?」
「えほんでも、あかめはふきつ、だっていわれてるけど、そんなことぜんぜんないな」

自分で納得するかのように頷いた静雄に、臨也は思わず泣いてしまった。

「ど、どうした?なんかいたいのかっ」
「ちっ、ちがっ…うれしくて……っ!みんな、ふきつだっていって、おれ、きら、ぃで……それでっ…」
「よしよし」

静雄はどうするか迷って、臨也の頭をいい子いい子した。自分が何かで泣くと母親がこうして慰めてくれて居たのだ。臨也も次第に泣き止み、ニッコリと笑った。

「ありがと、シズちゃん」
「おうよ。しってっか?」
「ん?」
「えほんのあかめのさいごはな、」



――友達と末永く一緒に居ましたとさ。



「ともだちと、ずうっといっしょなんだ。だからおれとおまえも、ずっといっしょだな」
「…うんっ、そうだね。ずっといっしょ」

二人は笑いながら手を繋いでデザートを食べに駆け出す。遠くで先生たちが嫌な目で見ていたが静雄と臨也には関係が無かった。












そうして、その日から十年ちょっとの月日が経った二人はアルバムを見つめながら笑い合っていた。

「うわーシズちゃん、小さい頃から変わらず甘党だったよねぇ」
「確かになあ…デザートの時間が楽しみで仕方なかった」
「だって、俺と遊んでてもデザートの時間になると「時間だぞ、早く行くぞ」て笑ってたもんね」
「あーそんなだっけか」

二人は絵本の内容どうり、末永く一緒に居た。その結果、恋人同士になったわけだが。手を重ねたまま見つめるアルバムの中には幼い自分たちが居た。一人仲間外れにされていた自分を静雄は声をかけ、ずっと傍に居てくれた。先生たちにも避けられていて、デザートを食べると嫌そうな顔をした。それは今になると分かったのだが、あれは自分が作ったデザートを不吉が食べるのは居たたまれなかったのだろう。

「……シズちゃんさ、先生を殴りに行こうとしてくれたでしょ?」
「あーあぁ」
「その時さ、死ぬほど嬉しかったんだ。俺みたいな奴にそこまでしてくれるシズちゃんにさ」
「だってムカつくだろ。ガキを預けて楽しませたりすんのが役目なのにいじめてるってよ」
「そうなんだけどさ。まあ…もう昔の事だし良いけどね。今はシズちゃんが居るし」

ずっと傍に居てね。と笑う臨也に静雄はその愛らしい唇にキスをした。












長々とすいません…!そして遅くなってすいませんでした。
こんな幼児化で良かったでしょうか…でわこれからも宜しくお願いしますねっ






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