怖さにどうしたら勝てるの?


※大人


桜の蕾が桃色に変わる春、私は成人式を終えて、正真正銘の大人になった。私はそれをきに自分で決めたアパートで独り暮らしを始めていた。
だけど独り暮らしなんてそう簡単にできることではなかった。
独り暮らしだから自分で朝早起きして、ご飯を作る習慣がなかったので、仕事には遅刻し上司に怒られたり。ゴミの分別のことで隣のおばさんに注意されたり。あと、アパートに慣れてなくてつい自宅にいる気分になってお風呂で好きなアーティストの曲を熱唱してしまって、次の日の朝、隣のおばさんに「歌うまいわね〜」なんて言われて恥ずかしい思いもした。
私はだんだん独り暮らしが嫌になってきた。いつになってもアパート暮らしに慣れない自分がイライラして仕方なかった。
私は彼氏である京介にどうしたらいいか相談した。
そしたら京介は“俺の家に来い”と言い出した。
私は迷惑になるので断った、だけど正直すごく嬉しかった。
すると京介は“ずっとそれでいいのか?将来、俺の家に来るんだろ?”なんて言ってきた。
私は顔が夕日のように赤くなった。もう、なんと言うか、これはプロポーズなのではないだろうか?
そんな思いを秘めながら私は結局、京介の家に行くことになった。一週間だけ京介の家で独り暮らしの修業をすることになった。家と言っても京介が独り暮らしをしている家だ。
京介の家にいく日、私は京介に“迎えに行くから待ってろ”と言われたので自分の部屋の番号を教えて部屋でうろうろして待っていた。
ピンポーン!と玄関から聞こえてきた。急いで、玄関のドアを開けると京介が立っていた。
「お、おはよう」
「おう……てか、お前こんなボロいとこに住んでたのかよ」
「ボロくないよ!このアパートで一番きれいな部屋借りたんだからね!」
「こんなボロいんなら最初から俺のマンションに一緒に暮らせばよかったじゃんか」
「あんな高いマンション私の給料じゃ住めないの!」
「だろうな」
そう言って優しく微笑んだ京介はかっこよかった。
なぜ、京介が高いマンション(高級マンション)に住んでいると言うと、今の京介は東京の有名なサッカーチームに所属している、期待の新人だ。
京介はそのチームと契約を結んだので、チーム側から高いマンションのカギを受け取ったと言っていた。
さすが東京で有名なチームは他のチームと違っていた、と京介が言っていた。京介はいろいろなサッカーチームを転々としていたのでどこのチームがいいか悪いか京介にはわかっていた。私は自分のアパートをカギを閉め出た。
「京介、バスで行く?タクシーで行く?」
「車で行く」
「え!?京介車の免許持ってたの!?」
「最近取ったばっかり」
「へーすごいね!ついでにどんな車?」
すると京介は車が止めてあろう駐車場を指指した。
「あの赤い小さな車?」
「バカ、その隣だ」
私は目を疑った。赤い小さな車の隣にはピカピカで黒くて大きな車があった。私は信じられなかった。京介があんなピカピカで黒くて大きな車に乗っているだなんて。
「本当にあの車?」
「あぁ」
「あの車テレビのCMでやってた!すごい高いやつ!やっぱり京介だねー」
「は?」
「いや、なんて言うか。似てる感じがしただけ」
「意味わかんね、行くぞ」
京介は私を助手席に座らせ。手慣れた手つきで車を運転し始めた。免許を取りたてなんて思わないような運転に私は圧倒された。
「ねぇ京介」
「なんだ」
「…ううん、なんでもない」
私が京介に言いたかったこと、京介には絶対わからない。
私が言いたかったのは
“これからずっと京介の家で暮らしていい?”て言いたかった。
ちゃんと言いたいのに。
言えない。怖いんだ。



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まだ続きます。








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