long | ナノ
09

昨日クジュラさんと話して、いつもの関係に戻れた。だがその過程で何か間違えてしまったのかなんなのか。何故か一緒に行動する事になってしまった。いや、雇われた、と言った方が正しいだろうか。私はクジュラさんの補佐官となった。それは元老院のお婆さん直々のお達しであったらしく、彼女にはお世話にもなったし無碍にすることも出来ず――今のこの状況に至っている。


「……分かったか?」
「え、あ、すみません聞いてませんでした」
「あのな……」

彼はこめかみを押さえて溜め息を吐く。そんなあからさまに呆れなくても良いじゃないか。現在いる場所は第二階層であるB7Fの野営地点、任務の説明を受けているところである。

「もう一度だけ言う、よく聞いておけ」
「はい」
「今はオランピアという女を追っている」

会ったことはあるか、と聞かれ頷く。確かクジュラさんに初めて会った二階でだったと思う。そういえばテントをくれたんだった。明るい雰囲気の、可愛らしい人だったけれど……あの笑顔は、まるで作ったかのようだった。

「彼女がどうかしたんですか?」
「ああ、あいつが今まで古代魚の巣に冒険者達をけしかけて、邪魔者を消していたらしい」
「……冗談じゃないですよね?」
「ここで冗談を言えるほど生易しい状況じゃない…」
「ですよね…」

やはりあの笑顔は偽物だったのか。小さく溜め息を落としてから、続きを促した。

「婆さんは一個中隊を派遣するといったが、いくら何でも多すぎる。俺の独断で今、一個小隊を捜索に当たらせている」
「……これで見つからなかったり取り逃したりしたら、クジュラさん大目玉ですね」
「……まあ、大丈夫だろう。他の冒険者もいるしな」
「じゃあ、私は何をすればいいですか?」

これからの自分の行動を仰ぐと、彼は少し逡巡してから私を真っ直ぐ見た。何故かクジュラさんと目が合うのは平気だ。慣れかな?少し期待しながら返答を待つ。

「……待機」
「え」
「リラ、お前はここで俺と待機だ」

期待した私が馬鹿だった。がくりと肩を落として小さく、了解の意の頷きを返す。やはり探査には行かせて貰えないのか。それが一番はじめに、上階へ進むことを止められたことを彷彿とさせて少し懐かしく、そしてそう思った自分が可笑しくて、笑ってしまった。

「何を笑っている」
「いえ、何でもないです。……クジュラさんって、」
「何だ」






過保護ですよね、といった私に彼は何故か焦っていた

- 9 -


*前 | 次#


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -