こくる | ナノ


ハルアベ
榛名語り長い!
高校卒業した数年後
つきあってない






















「ランニングがてら、どーすか」




 隆也に誘われて、二人で郊外の丘に星を見に来た。
ああ見えて意外とロマンチストなんだよな。

 緩やかな丘に沿って舗装された道をひたすら走り、しばらくした頃に何かの目印があったのかタカヤの合図に立ち止まり、促された林へ入る。少々足場の悪い獣道を分け入り、弾んだ息は整えつつ無言のまま歩いた。

 木々を抜けたところに街が見下ろせる開けた場所があった。古びた木製のベンチがひとつある公園とも呼べない原っぱ。辺りは真っ暗だが、いくつか灯る民家のあかりとはるか遠くに見える繁華街のあかりが綺麗で、それ以上に。



「すげえ星だな…」



「………ですね。」



「ちょっと走っただけでこんなに見えるモンかァ」

「………んー。」

「晴れてるし月無いし、タイミング良いな!」

「……………。」

「なぁ?」

「……………。」



なんだ
なんか反応うすい
てかシカト?
てか上の空?
てか上の空の星に見とれてんのか?



いまちょっと上手いこと言った俺。
なんて事を考えながらも、腰を下ろしたベンチから星を眺め続けた。


(ああ、なんか言いたいのか。)


いつまで経っても口を開かないタカヤを視界の隅で観察しつつ待つ。少し気まずくなって鼻を啜ったりアーとか言ってみたりしたけど、樹の葉ずれしか聞こえない空間に次第に慣れてきたので、黙って待った。

せっかちなオレが待てるのはタカヤと赤信号ぐらいだろうと思う。こいつはタカヤも大概せっかちだから、こうして黙りこくることは珍しいが、長い付き合いで何度かあった。


例えば、シニアのとき、口げんかになってしばらく距離をとった事があった。いつもは人目も気にしないでズバズバ言ってくるくせに、その時も今日みたいに誘い出して黙ってた。
当時の俺はあんな性格だったし、それも初めてだったから、俺はイラついて怒鳴って帰ろうとした記憶がある。


それから、プロになった俺にただおめでとうございます、と言うだけでも照れくさかったのかいちいちこんなだった。
これからも家行って良いですかとか一緒に走り込みとかしてくれますかとか言ったのでモチロンだと返してやった。わざわざ断らなくてもいいと。

タカヤも大学で野球をしているが、プロと学生の壁がどうたらこうたら言っていた気がする。

もっともらしくそんな事をのたまう唇は震えていたし、耳は真っ赤だったし、顔は膝にうずめたまま上げられない程にグシャグシャだったのだろう。


こいつって本当に――――なんだな、と思った。




その頃の事を思い出して自分の顔が満面の笑みになっていることに気付いた。
はっとしてタカヤを盗み見ると、まっすぐまばたきをせずに一点を見つめていた。すごく集中している。


タカヤは、なんつーか未知だ。いつも何か考えていて、それは俺には想像もつかないことばかりで。
だからこそ、タカヤから導き出される結論を、俺は待った。



(まだかかるかな、こりゃ。)

空を見上げる首が痛くなってきて、足元の草をぶちぶちちぎりはじめた頃、ようやく隣からものおとが聞こえた。




すう、と大袈裟に吸って

止めて

小さく吐く。





「……元希さん。」

「ん?」

「すきです」

「………。」



「ずっと一緒に、いたい、んです」





「…………。」







「あ、の。」

「そ……んなに、」




深く考えないで下さいね。タカヤはそう苦笑いして、すくっと立ち上がる。
上を向いてよく見えない表情はどんななのか、簡単に想像がついた。

その告白を聞いてなお、俺は過去のタカヤを思い出していた。

感情のコントロールが下手くそなタカヤ。あの時俺はタカヤをすごく可愛い人間だと思った。




そして今、やっぱりな、と思った。





「ま、しってたけどな。」





漠然と思った言葉は意外とするりと言葉になって出てきた。


「………え?」

「ずっとおれが好きだったんだろ?」

「………スイマセン」

「あやまんな」




(本当に、こいつは。)

(わかってんだか、わかってないんだか。)






「タカヤ。」
「…は―――ぅわ」


強く腕を引く。
ベンチにしりもちをついたタカヤの耳を両手で包み込み、キスをした。
俺は目をつむったが、タカヤは目を開いていた。水滴のついたまつげがぱさぱさとまばたき肌に触れる。


「……っ!……!」


数秒間ののち顔を離すと、思ったより涙でぐちゃぐちゃのタカヤの顔があった。


「う、そ……な…にして…!」


間近にある両目を見ようとして忙しなく眼球を動かしている。



「タカヤがおれを好きなら、おれもタカヤがすき」

「何、言ってん……」「バカじゃねーの」「ッミわかんね…」


泣いているのか笑ってるのかわからない声で言う。


「だからさぁ。今まで、どんだけ一緒だったと思ってんだよ」「いまさらだっつーの、そんなの。」


 おれとお前の仲じゃんか―――。


至近距離でそう告げると、タカヤは嗚咽をも漏らしてまた泣きだしてしまった。下を向く頭を抱きすくめて、俺は空を仰ぎ見る。



視界一面には、降ってきそうな星の空あった。





ほら、あんなに見られてんだよ、俺たち。
声に出さなくたって、星が知ってるんだって。
それでも
言葉にしなきゃ不安ならこれからはいくらでも言ってやるから、心配すんな。







「すきだ。たかや。好きだ。」







fin\(^^)/





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ベタ惚れ阿部氏と無駄な男前を発揮する榛名氏。


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