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しろくましろくまおどりましょ

好きだから、付き合ってほしい。
要旨を纏めればそういう話だった。信じてしまいそうな、否、信じたくなるような話だった。
言葉を選びながら訥々と話すソロの姿を、クリフトは目を細めて見つめる。嘘を吐くとき、ソロは左の耳を触る癖があった。

焦がれた相手に冗談の告白をされている。その事実は、クリフトの心にどろりとした暗い感情を沸き上がらせた。冗談の告白をする相手に選ばれている以上、ソロはクリフトをそういう対象にカテゴライズしていない。当然と言えば当然だ。ソロも、クリフトも男であり、世間では同性愛は一般的ではない。当の本人であるクリフトですら、自身がソロに対して抱くものを恋愛感情だと認めるのに相応の時間を要した。自覚したといっても伝える気など一切無く、墓場まで持っていこうと腹を括った。
それなのに、この仕打ちだ。
恐らくは罰ゲームか何かだろう。何にせよ、クリフトにとってはあまりに質の悪い冗談でしかない。
こちらの気も知らないで、よくも。そんな罰ゲーム、突っぱねてしまえばいいのに。よりによって、自分なんか選ばなければいいのに。
感情の矛先を四方八方へと向けながら、クリフトは奥歯を噛み締めた。
例え嘘だったとしても、冗談を言う相手として選ばれたのだとしても、確かに喜びを感じている自分自身が、一番嫌だった。

ひどく惨めな気持ちのまま、クリフトはのろのろと顔を上げた。このタイミングで露見することだけは避けたかった。
一方でソロは、狼狽えるでも、冷たくあしらうでもないクリフトに、種明かしをするタイミングを計りかねているようだった。

――この人は、私がこれほどまでに悩んでいることなんて、全く知らない。
そう思った刹那、どこかで何かがぱちんと弾けた。頭が急激に冷えていく。そうだ。何を迷っていたのだろう。最初から、こうすればよかったのだ。気づいてみれば、何も難しいことではない。

「いいですよ、よろしくお願いします」
普段よりも落ち着いた声が出た。どこへ付き合えばいいんですか?なんて、お約束の質問をしてやるつもりは小指の先程もない。驚いたように目を見開いた彼に向けて、にっこりと微笑んでやった。

こっちは騙されているんだ。少しぐらい困らせたって、いいじゃないか。
誰にも知られないうちに殺した感情が再び息づくのを感じながら、クリフトは誰に聞かせるでもない言い訳を心の中で呟いた。
視線の先、ソロは相変わらず目を見開いたままで動かない。困惑した表情は、そこに恋愛感情が存在しないことを何よりも雄弁に語っている。
胸の奥がじくりと痛んだ。


***
しろくまダンスが勇←クリからの勇クリにしか聞こえない時期がありました




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