【ピサクリ】 自分より高い身長、広い肩幅。それなのに私が隣に並んで遅れることなく歩けるのは、彼が歩幅を合わせてくれているから。「ピサロさんは優しいですね」と微笑んでみせると、返ってきたのは沈黙。右隣を歩く彼の表情は逆光でよく分からないけれど、きっと訝しげな顔をしているのだろう。
【ピサクリ】 私が貴方に寄り添っていられる時間は限られていて、それはきっと貴方にしてみればごく僅かな時間でしかないのだろう。堪らなくなって服の裾を掴んで引き留める。泣きそうな私を見てぎこちない手つきで髪を梳く貴方の、肌に触れるひどく冷たい掌に涙が出そうになった。
【勇クリ】 お誕生日おめでとうございました。囁くような静かな声と、期待していた場所より数センチ上に落とされた柔らかい感触。「…唇じゃねえの」「あれ、知らないんですか?祝福のキスは額なんですよ」いきなり目を開けた俺に、驚くでもなくくすくすと笑みを零す。狸寝入りはバレていたようで。
【勇クリ】 お誕生日おめでとうございました。囁くように告げると、私の膝を枕に寝ている彼が小さく身じろいだ。近づけた顔を唇に触れそうなところで止めて、整った鼻筋を辿って、額へ。音もないそれに不満そうに口を尖らせた彼はやはり起きていたらしい。寝たフリ、下手ですよねえ。
【アリクリ】 「クリフトも一緒じゃなきゃ、や。」ぷい、とそっぽを向くだけで、大人たちは目に見えて狼狽した。結局連れてこられたクリフトは、ピアノも裁縫もスポンジのように全て吸収して私より先に花嫁修業を終えてしまう。ここまで上手くいくものなのね。ねえ、私のお嫁さん、完璧でしょう?
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