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「レベルを、上げるべきだと思うんですよね。」
朝食の席でトーストにバターを塗りながら、何でもないような口調で神官が呟いた。
「何だよいきなり。」
「だって流石にまずいでしょう、レベルの差がトリプルスコアって。」
「ことある毎に俺を殴ってレベルアップしてるのはお前だよな?」
「えっ…ソロさんあれ本気にしてたんですか…?ソロさん殴ったところで貰える経験値なんてたかが知れてますよ、スライム換算で……いえ、これ以上はやめましょう。」
「今やめたところでもう手遅れだけどな。」
「じゃあ続けますね。自分がそんなに価値の高い人間だと思ってたんですか?」
「やめて!やっぱりやめて!!」
言葉はナイフとはよく言ったもので、恐ろしく鋭利なそれを容赦なく突き刺してくる神官は到底神に仕える人間とは思えない。こんな男を首席で卒業させてしまう神学校に一抹の不安すら覚えた。そろそろ目から汗が出そうである。あ、視界ぼやけてきた。
「まあ、それはさておいてですね。経験値稼ぎにちょうどいい場所があるんですよ。」
散々な罵倒を「それ」呼ばわりで片づけた神官が、荷物の中から地図を取り出す。この辺りですね、と広げた地図を指差し、淡々と道順を述べる。まるで他人事であるかのような態度に何となく嫌な予感がしておずおずと「お前来ねえの?」と尋ねると「え、行きませんよ」とあっさり返された。
「私がいると強い魔物としかエンカウントできないじゃないですか。」
「……俺、回復できないんですけど。」
「手荷物に薬草入れといたんでそれで凌いでください。」
語尾にハートマークでもつきそうな語調で「頑張ってくださいねっ」とわざとらしく小首を傾げられた辺りで同行の意思が微塵もないことを悟った。文章に起こすと可愛らしい仕種でも実際やっているのは同年代の男であって、全く可愛くないし嬉しくない。というか状況が状況なだけにむしろ腹立たしい。
「私、ここで応援してますから。」
にっこりと笑顔を浮かべてひらひらと手を振るのがせめて女子だったらよかったのに。



「お前に殴られ慣れたせいか魔物の攻撃がそれほど痛くなかった。」
「そうですかそれはよかったですねー」
「えっ、ちょ、何で蹴るんだよ!痛い痛い!!」



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