小説 | ナノ





【シグクル】
言葉での愛情表現をクルークがするのは珍しく、シグも少なからず驚いたようだった。「…今読んでる小説の台詞だよ」ちぇー、と口を尖らせるシグに、内心胸を撫で下ろす。重厚な装丁のそれはどう見ても小説などではなく魔導書なのだが、本を読まないシグはそれに気付かない。

【まぐクル】
目は口ほどにものを言うようで、両目を隠した自分の機嫌の良し悪しは傍目にはよく分からないらしい。それが彼には不満のようだった。「だって君、僕の顔直視できないじゃない」「毎日見てたら慣れるかもしれないじゃないか」不貞腐れたような顔で呟く彼は、毎日一緒にいるつもりのようだ。

【まぐクル】
「おはよう」と声をかけて頬に軽く触れるだけのキスをする。え、と言ったきり黙ったかと思うと両肩を掴んで詰め寄られた。聞けば、親愛を表すこの挨拶はどうやらまぐろの元いた世界では一般的でないらしい。真っ赤な顔で説明するのが何だか面白いから、これから毎日やってやろう。

【シグクル】
「なんにんほしい?」「何が」「こどもー」突飛な質問に思わず噎せた。「だいじょうぶ?」と首を傾げるシグの態度はあっけらかんとしたもので、生物学的に無理だと正論を言っても仕方がなさそうだ。偶には乗っかってしまうのも悪くない。暫く考えて口を開く。「…二人、かな。」

【シグクル】
「クルーク」と自分の名を呼ぶ声がして、魔導書に影が落ちた。纏わりつく体温は温かくて、振り解く気にはならない。本を閉じて顔を上げると「抵抗、しないの?」と意外そうな声。「してほしいのかい、君は。」「ううん」頭を揺するシグの髪の毛が首筋を掠めて擽ったい。

【まぐレイ】
自分は命と一緒に落としてしまったけれど、彼には寒いという感覚がある。それなのに、吐く息が白くなっても彼は決して寒いと言わなかった。「抵抗しないんだ?」抵抗も何も、抱き締めることすらできていないのに、彼は、まぐろは、そう言って笑う。雪は、止みそうにない。



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