小説 | ナノ





【ピサクリ】
何かを言い淀むように視線をさ迷わせた後、そろそろと両手でピサロの手を取ると、自分の胸元に押し当てた。真っ赤になった頬は、暑さが原因ではなさそうだ。ピサロは驚いたように瞠目してから、「わかった」と微笑んで額に唇を落とした。

【131】
暦は秋だが照りつける太陽と綿菓子のような雲は真夏のそれだった。「お前、普通の服着てると完全に村人だな」と揶揄すると、ムッとした表情を浮かべて足を速める。お前に目を付けるのは俺だけでいいんだよ。僅かに自分の面影を残した男の少し跳ねた毛先を眺めて一人呟く。

【デボラと娘】
戦闘を終えたタバサの髪はぐしゃぐしゃで、リボンも取れかけていた。「タバサ、こっち来なさい。」首を傾げながらも素直に駆け寄るタバサを馬車の荷台に座らせて、手櫛で髪を梳く。くすぐったそうに身を捩るその後ろ姿に幼い妹が重なった。久々にサラボナを訪れるのも悪くない。

【勇シン】
ふふ、と楽しそうに微笑む彼女の髪に手を伸ばして触れる。指を掠めた肌の温もりに思わず口をついて出た「あたたかい」の言葉に「何変なこと言ってるのよ」と言って彼女はまた笑う。間近に迫った顔が、涙で滲んで溶けた。「ソロってば、相変わらず泣き虫ね。」そうだね、シンシア。おかえり。

【主テリ】
「テリーは小さいなあ」と頭に置かれたレックの手を振り払い、徹底的に目を合わせないようにして早3日。拗ねたように理由を問う彼に「首が疲れる」と返す。ポカンとした間抜け面に向けて俺は小さいからな、と続けると、情けない顔で謝り出した。必死な姿に溜飲を下げる。ざまあ見ろばあか。

【アリクリ】
女の子だったら、よかったのよ。それで、私が王子だったらよかったんだわ。生まれてくる性別を間違えたのよ。私だって体が弱い女の子を旅に連れて行くほど馬鹿じゃないわ。そうしたら病気にかかって倒れたり、何日も目が覚めなかったりなんてしなかった。反対だったらよかったのよ、何もかも。



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