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【シグクル】
窓ガラスを叩く音で目が覚めた。こんな朝早くに一体誰が。文句を言おうと窓を開けると「クルーク、おたんじょうびおめでとー」と気の抜ける間延びした声。渡された花はムシが集まるからと彼が大切に育てていたもので、「いちばんのりー」と笑う彼につられて思わず頬が緩んだ。

【アミティと】
「一緒に帰ろうよ」と笑顔で手を差し出して、僕が答えるより先に手を掴んで走り出す。「君は、もう少し、落ち着くべきだ!」速度を緩めないアミティに切れ切れに言うと「そうかなあ?」と気の抜ける返事。子供の様にしっかり繋がれた手はどこか気恥ずかしいけれど、嫌な気はしない。

【レムクル】
「あま〜いキャンディーをあげようね」お決まりの台詞の後に、アミティの手に赤、僕の手に紫を乗せて去って行く。「レムレス、知らなかったのかなあ?」と首を傾げるアミティの言葉に、緩む頬を必死で抑えた。手の中の紫は彼のお気に入りで、普段なら他人にあげたりなどしないのだ。

【みんなで】
別れ道を過ぎても、何故かアミティはついてきた。「何で君はついてくるのさ、」「いいからいいから!」ぐいぐいと背中を押されて、促されるがままにドアノブに手をかける。開けた瞬間、破裂音と共に飛んでくる紙テープと祝福の言葉。今日ぐらいは僕も素直になれるだろうか。

【あや様と】
クルークの意識が無くなったのを好機とばかりに表に出てみれば、散らかった部屋に漂う仄かな甘い匂い。口元を拭うと、ホイップクリームの白が指を汚した。大切そうに抱えていた大小様々な包みを崩さないように移動させて立ち上がる。片付けぐらいはしておいてやろう。

【クルーク】
目を覚ますと、外はもう真っ暗だった。慌てて立ち上がるとかけた覚えのない毛布がずり落ちる。まさか、と周囲を見回すと、散らかった部屋は元通りに。関係のない本棚まで整理されている辺りが彼らしい。ありがとう、と呟いて封印の記録の装丁を撫でる。微かに温かいような気がした。

Happy Birthday Klug!!

(120929)



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