小説 | ナノ





「もっと拒否ると思ってたのに、以外とあっさり折れたなお前。」
「……確かに、宗教が絡む職業については監視の目も緩みがちになりますから。他国の王族の側近とあれば迂闊に手出しもできないでしょうし、加えてサントハイムは神学校を有する宗教大国です。門前払いを食らうことはまずないでしょうね。そう考えての提案なのかは分かりませんが、なまじ作戦が悪くないだけに否定もしにくくて。」
「…………」
「ソロさん?」
「俺、お前だけは敵に回したくないわ…」


「髪の毛、このままでいいんでしょうかね。短すぎません?」
「ん、ああ、これ。付け毛みてえなやつ。……積極的だな。」
「どうせやるんだったら、本格的にやった方がいいでしょう?男であることが露見して変態のレッテルを貼られるのはごめんです。」
「お前のその潔さには感動を覚えるわ……」
「はいはいどうも。…上で纏めれば境目もそれほど目立ちませんね。」
「化粧は?」
「しませんよ。私にもプライドぐらいあります。」
「バレねえ?」
「俯いてりゃ何とかなります」
「まあお前女顔だしな」
「何か言いましたか?」
「何でもないです」
「最悪の場合はソロさんの恋人を装ってひたすら腕にしがみついて顔を隠します」
「俺はお前の思考回路が心底恐ろしい」


「終わったかー?」
「ええ、一応。」
「ちょっと見せろ気になる」
「見て何の足しになるんですか」
「そのうち皆に見られるんだからいいだろ別に。入るぞー」
「え、あ、ちょっ…!」
「…………」
「何ですかその反応」
「笑えねえ」
「そんなにひどいですか」
「似合いすぎて笑えねえ」
「……は?」
「いやいやお前それは詐欺だろ睫長いわ肌白いわ髪上げてるから項見えててエロいわ何だもうやりたい放題か!」
「私にも理解し得る言語を使ってくださいませんか」
「取り敢えず上目遣いで名前呼んでみ」
「……冥府の王よ、今ひとたび我に」
「待ってクリフト待ってそれザキの詠唱」


「……何も向こう臑蹴ることないだろ」
「すみませんちょっと貞操の危機を感じまして」
「俺が何したって言うんだ」
「『袴って何かエロいな』と言った後、袴の横から手突っ込んで太もも撫でさすってきました」
「ちょっとした冗談だろ」
「その後『和服って肌蹴やすいし脱がしやすいしいいよな』と言いつつ袷に手かけて本格的に脱がす過程に入ったので蹴りました」
「ごめんなさい」
「次何かしようとした場合は隣の部屋に聞こえる程度の音量で泣きながら抵抗します」
「さっきより待遇よくなってね?誘ってる?」
「言い忘れましたが今日の隣室は姫様です」
「死亡フラグじゃねえか」


(120715)



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