小説 | ナノ





※エロくは無いけど下ネタ注意
※何でも笑って許せる人向け






クリフトに、告白をした。
真剣に、思いを伝えたはずだった。


―――なのに、どうしてこうなった。


カチャカチャと金属質な音に次いで、布が擦れるような音。目の前の人物が自身の腰に巻き付けられたベルトを引き抜いたのだと理解するまで、数秒を要した。手にしたベルトを無造作にベッドに放ると、流れるような所作でスラックスの紐を解く。日に焼けていない白い足が露わになるのに、思わず目を逸らした。上着のボタンに手が掛けられるすんでのところで手首を掴んでそれを制する。視界に入ったクリフトは、意外そうな表情を浮かべていた。脳内の混乱を振り払って、目の前の人物を見据える。

「ちょ、待て待て待て。お前、何してんの?」
「何って、服を脱いでるんですが。」
「いや、何でいきなり、」
「何で、と言われましても…告白してきたのは、ソロさんじゃないですか。」
「……サントハイムには、告白されたら脱ぐ風習でもあるのか?」
「いえ、特には。」
「じゃあ、何で、」
「同性に告白する程度には、溜まっているのかと思いまして。」

何を言っているんだ、コイツは。ていうかお前の口から「溜まってる」とか聞きたくなかった。そういう話に疎いものだとばかり思っていた。

「いや、そういう一時の気の迷いとかじゃなくて。ずっと前から、好きだった。」
「じゃあ尚更じゃないですか、さっさとヤりましょう。」
「ヤりっ……!?」

更に聞きたくない言葉が飛び出してきた。正直、「赤ちゃんはコウノトリが運んでくる」レベルの性知識しかないと思っていた。見くびっていたことは謝る。謝るから、どうしてその発想に至ったのかを知りたい。お前の思考回路はどうなっているんだ。何で告白して一分経たないうちに脱ぎ始めるんだ。

「……違うんですか?恋人同士がすることの代表格だと…。」

きょとんとした表情でこちらを見つめるクリフトに、軽い眩暈を覚えた。

「いや、普通にあるだろ!キスとか、手つなぐとか、抱き締めるだとか!」
「随分理性的ですね、不感症ですか?」
「違えよ!お前は世の中の男を何だと思ってるんだよ!」
「即物的な生き物だと……正直、盛りのついた獣のオスと大差ないと思ってます。」
「全国の男に謝れ!つうかお前も男だろうが!」
「そうなんですが、幼い頃から同世代の友達はおろか知り合いすらいなかったので、一般的な感覚がよく分からなくて…」

顎に手を当てて首を傾げてみせるクリフトにスラックスを穿くよう促す。それにしても、昨日の夕飯のことでも話すかのごとく、重い過去を語らないでほしい。
そもそも知識が偏っている上に、根本的な部分が欠落している。正しい云々以前の問題だ。
想いが叶ったというのに、素直に喜べない。さっきから続いている偏頭痛は、収まる気配すら見せなかった。

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