小説 | ナノ





「ねえ、これは?」
「そうですね…個人的には、もう少し落ち着いた色の方がミネアさんには合うかと。例えば……これとか、」
「あら、いい見立てしてんじゃない。あたしもそっちのがいいと思うわよ。」
「でも姉さん、これからの季節、これだけじゃ流石に寒いわ。」
「では、こちらと合わせては?」
「あ、それ可愛い!似合うよミネア!」
「じゃ、決まりね。次は靴見に行くわよ。」
会計を済ませてクリフトが衣類が詰まった大きめの紙袋を受け取る。その横でアリーナがお釣りを受け取って財布に戻した。ぱっと見双子のような褐色の肌の姉妹とまだどこかあどけなさの残る少女、そして三人と比べて頭一つ分大きな終始笑顔を絶やさない青年。端から見るとなかなかにアンバランスな一行は、次の目的地である靴屋のガラス戸を押し開けた。カランコロン、とドアベルの音がして、店員が笑顔で駆け寄ってくるのを、喫茶店の一角から肘をついて眺める。氷が溶けて水っぽくなったコーラをストローで吸い上げると、チュゴゴゴ、と間抜けな音を立てた。隣ではライアンがブラックコーヒーを、トルネコがフルーツジュースを、ブライがグリーンティーを思い思いのペースで飲んでいる。目線で追っていた光景に比べて、随分と暑苦しい。何というか、メンバーが。
ちらりと目をやった足下には、紙袋や包装された箱が所狭しと並べられている。彼女たちの本日の戦利品だ。
トルネコが片手を挙げてウエイトレスを呼び、「ミックスサンドとパンケーキ、後コーラを一つ」とメニュー表を見ながら頼む。グラスに残った氷を噛み砕いて飲み込んだのとほぼ同時に、ウエイトレスが新しいコーラをテーブルに置いた。


戦闘時の装備品は、町で過ごすのには適していない。例えばピンクのレオタード。守備力はそれなりに高いけれど、町で過ごす際の服には到底向かない。というかあんなもの着て町を闊歩していたらただの痴女である。水の羽衣だって火炎を吐く魔物と戦うときは重宝するが、日常生活においてふよふよと雲とも霧ともつかないものが裾部分に付き纏うのはなかなか鬱陶しいようだ。マーニャ曰くじめじめするらしい。
そんな訳で女性陣は秋冬ものの服を求めて絶賛買い物中だった。当初荷物持ち要員だったクリフトがいつの間にか一緒になって品定めをしていたのには驚いたが、まあ顔は整ってる方だからいいナンパ避けになっている気がしないでもない。
ストローをくわえながらどうでもいいことをつらつらと考えていると、買い物を終えたらしい四人がこちら向かって歩いてくるのが見えた。仲睦まじくカップアイスを食べている。アリーナが小さなスプーンをクリフトの口に運んでいる所だった。
装飾品や靴が入っていると思わしき紙袋をいくつか提げたままアイスクリームを食べさせ合う光景に、さも当然のように男が混じっているというのはどうなんだ。いやだからお前も差し出されたアイスを平然と食うなよ。チョコミントも美味しいですね、じゃねえよ。
他にも色々と言いたいことはあったが、取り敢えず「お前は男としてそれでいいのか」と声を大にして問いたいのは確かである。


駒鳥の集い

(110924)



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